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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ9-3

そしていつの間にか、クリスマス当日。
「なんでクリスマスなのにこんなとこになってるのよ!」
「まあまあ、由貴ちゃん、いいお店だよ」
六人は結局、“武士道”でクリスマスパーティーをすることになった。
なぜかこの六人はいつも優柔不断で計画が立てられないのだ。
店主は気を使ってチキンなどクリスマスに合った料理を出してくれる。それがせめてもの救いだ。
「灰慈、そこにある醤油とって」
「ほい」
「あ、うちも♪」
「ほい」
葵はいつも通り元気な姿を見せていた。
「………」
「ま、メリークリスマスや♪」
みんな段々と酒が入り、宴会のようになっていた。

「でさー!あたしにしつこく迫ってきたやつがいてー!一発殴ったら泣いて逃げちゃって!」
「あっはっは!」
やはりこういう場では、灰慈と由貴の相性はぴったりだ。

『……大丈夫か?』
「なんでみんなお酒が呑めるんだろう…」
『無理すんなって、いちおう未成年だし、体に障ったらどうすんだ』
「……うん」
瞬と悦乃はいつも通り。

「……」
「……」
「「あのさ」」
「あ」
「はは…なに?」
「青空くん、先に言って」
「うん……葵ちゃん、ごめん。あんな毎日待ち伏せるようなことして」
「……うちも謝ろうとしてたの。偽善なんて酷いこと言っちゃってごめんね。うち、勘違いしてた」
「……じゃあお互い様ってことで」
「うん♪」
葵は青空に謝ることができた。
しかし…束の間の平穏は、長くは続かなかった。

「……あ、葵ちゃん、ケータイ鳴ってるよ」
「え?」

着信 父親

「出ないの?」
「……うん」
葵の手が震えているのを、青空は見逃さなかった。
「………」


そして解散。
結局、ケーキを食べることはなかった。
「じゃあね」
『また』
「ほなな」
「おやすみー」
「じゃね♪」
「またね」
瞬と悦乃は二人でタクシーに乗り込む。
他は電車、バスなどで帰宅するためにそれぞれの方向へ歩き出す。


葵は一人、バス停に立っていた。
ケータイを開き、着信履歴を一つずつ消していく。

父親
父親
父親

自分が段々と涙目になっていくのがわかる。
「泣いてるの?」
その声のほうを即座に振り返る。


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