最低な私-1
視線が痛い‥。
でも目をそらせない。
真っすぐすぎるその瞳で私を見ないで‥。
何もかも見透かされそうで恐い。
そんな瞳で私を見ないで。
ミナイデ‥。
視界が滲む。
頬をつたって、また視界が滲む。
いろんな想いが溢れる。
今まできつく蓋をしてきた想いも、ついさっきまでは感じてなかった想いも‥。
全てを言葉に変えることはとても困難で、出来たとしても、それは建前で‥。
いつだって本音は出てこない。きっとそれはシンプルで、誰だって知ってる言葉であって‥。
でもそれを口にすると、総てが音もたてずに崩れてしまう。
誰一人、傷つかずにすむ方法はないみたい。
みんなそれなりに望みがあって、一度には叶わない。誰かの大きな望みが叶って、私の小さな望みが叶わないことだってあるらしい。
建前じゃなくて、限りなく本音に近い言葉を‥‥。
「私は‥‥‥私はきっと結城君が思ってるような人間じゃないよ‥。すごく狡くて、すごく卑怯で、人が怖くて、それなのに一人になるのはもっと恐くて‥。見栄っぱりだし、小心者だし。だから‥‥。」
だから‥‥だから‥‥。
『知ってるよ。そんなことくらい。サッちゃんはいつだって狡いし、卑怯だよ。俺の気持ち知ってるのに仲良くして、気付かないふりして笑って‥。
誰かに縋りたいのに見栄はって一人でなんでもしようとするし、もう見てられないよ。どうせ俺に申し訳ないとか思ってるんだろ。
いいよ‥俺はサッちゃんに利用されたって、騙されたって‥‥。
だから、もう‥泣かないで‥‥‥。』
気が付いたら彼も泣いていた。
私は最低だ。
一体どれだけこの人を傷つければ気が済むのだろう。
私はあのとき彼がしてくれたみたいに、そっと彼を抱き締めた。
その胸はあのときと変わらず暖かくて、肩は驚くほど震えていた。