きっと、そうー体育祭-3
「はい!」
そう言われて、バトンを受け取ると全速力で走りだす。
前にいる走者を捕らえ、抜かそうとしたとき・・・。
その走者が少し外側にずれてきたので思わずバランスを崩す。
転びはしていない。
態勢を整え、あと半分ほどの距離を一気に走り抜けた。
結局癒芽達のグループは1位。
退場をしていったけれど・・・。
「痛っ・・・。」
バランスを崩したとき足を捻ってしまったみたいで、予想以上の痛さ。
平気な振りをして歩いているけれど、あとで湿布か何か貼ってもらおう。
あ・・・さっきのところにまだ悠哉がいる。
声かけてみようかな?
「・・・悠哉?」
しゃがんで携帯をいじっていた悠哉は顔を上げた。
「おかえり!」
そこは「お疲れ」じゃないの?と思いながらも、「ただいま。」とかえす。
「あ、そうだ。これありがとう。」
リストバンドを外し、返そうと数歩足を進める。
「・・・どういたしまして。」
悠哉は自分の腕にリストバンドをはめると、立ち上がった。
「・・・?」
どこか行くのかな?
あ、もしかして早く返してほしかったとか?!
「ごめ・・・?!」
「ごめんなさい」と言おうとしたが、言えなかった。
いきなり視界は地面から青い空へと変わり、足は浮いている。
所謂、お姫さま抱っこの状態。
「ちょっ・・・?!悠哉、下ろして!」
周りの人の視線を感じる。
しかし悠哉は、そんなこと言わずに何処かへ向けてスタスタと歩いて行く。
「悠哉!」
驚きと恥ずかしさのあまり、大きな声で悠哉を呼ぶ。
すると悠哉は歩いたまま、
「黙って。足痛いんだろ?」
と言った。
・・・ばれてたんだ。
下ろしてもらいたかったが、諦めて温和しくした。