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僕とお姉様
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僕とお姉様〜お姉様の恋〜-1

僕が悩む必要は無い筈なのに、あれから何となくお姉様と顔が合わせ辛い。
理由は罪悪感。
元彼が話していた内容を伝えた方がいいのは分かってるけど伝えたくない気持ちが遥かに上回っている。
だって出て行かれたら困るもん。
この空間に置き去りにされたくないもん。
100%自分中心の理由。おかげで罪悪感は増す一方だ。


机に向かう僕の後ろからベッドに腰掛けたお姉様の視線を感じるが、気づかないフリ。

「山田ぁ」
「宿題中です」
「いつ終わる?」
「もうすぐ」
「暇」
「風呂は」
「入った」
「歯は」
「磨いた」
「早く寝れば」
「ドリフか」

くだらないやりとりが終わると再び沈黙が始まる。相当暇なのかベッドに寝転がったりストレッチをしたり、無駄な動きをしているのが見なくても分かった。

「明日のご飯何がいい?」

暇な居候のお姉様が自然に夕飯当番になって何日か経つ。やってもらえるのはありがたいんだけど、

「鍋以外」
「無理」

即答かい!
基本的に家事が苦手らしく、連日連夜鍋物しか出てこない。

「じゃあキムチ鍋でいいです」
「了解」

了解じゃねえよ。
この人は今までもこれからもずっとこんな調子なんだろうな。
多分あいつと付き合ってる時も…
ぶんぶんと思いっきり首を横に振った。それこそ後ろで見ていたお姉様が引くぐらい。

「どうした」
「…何でもないです」

忘れる為に顔を見ないようにしてるのに何で思い出してるんだよ。
やっぱり話せって事なのかな。日に日に気になってくるんだもんな。そうすればこの人は幸せになれるんだよな…
やっと分かった『朝子』という名前も寝顔に向かって試し呼びして以来口にしてない。呼んだらあいつと会った事がバレてしまうから。
朝子。
朝子…
持っていたシャープを置いて、180度椅子を回転させてお姉様を見た。

「終わった?」
「…終わった…」
「もー、暇だよ!何か話そうよ」

僕にはこの人の胸の内が全く分からなかった。
名前は名乗らないし素性も明かさない。赤の他人の家に居候の割にはのびのびしてるし仕事を探してる気配もない。このままうちの家事手伝いになってしまいそうな勢いさえある。

「…あのさ」
「何?」
「……」
「何よ」
「や、いいや。風呂入ってくる」
「何それっ」
「別になんでもない」

パジャマと下着を手にさっさとその場を立ち去ろうとする。

「ねぇ、あたし何かした!?」
「…っ」

その質問に内心動揺したが、悟られたくなくて無言で部屋を出た。

「山田!!」

呼ばれても振り返れない。
避けてるって気づかれてた。
お姉様は何もしてない。僕が自分を守りたくて逃げてるだけで…、そのせいであんな顔させてあんな事言わせるなんてどうしようもない子供だ。
こんなんじゃ本当の事を言っても言わなくてもいずれ出て行ってしまうだろう。だったらもう話してすっきりしてしまいたい。僕の精神力にこの罪悪感は重すぎる。


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