彼女の視線の先-3
どうやら俺は悪魔に心を売ってしまったらしい。
奏人があの子と付き合い始めてから、俺は君と名前で呼び合うような仲にまでなった。
でもやっぱり俺じゃ役不足みたい。
俺は君の退屈な時間を埋めてあげることしかできない。君の一人の時間は奏人でいっぱいで俺のはいる隙間はなかった。
きっと君は知ってしまったんだろう。
奏人に彼女ができたことを。
それで悲しんでるんだろう?
俺は吸い込まれるように教室に足を踏み入れた。
君は俺に気付いて驚きながら、涙をふいて、少し笑ってみせた。
俺は彼女のそんな顔を見たら、心を細い糸で何重も巻かれて、きつく引っ張られたような感じがした。
気付けば肩を抱き寄せてた。
最初は抵抗していたが、諦めたのか俺の胸で小さな嗚咽をもらしながら、彼女は泣いた。
俺は初めて誰かを愛しいと思った。
ずっとこのまま時間が止まってしまえばいいと思った。