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カーテンと机とつぶれた気持ち
【青春 恋愛小説】

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季節の変わり目-1

あたしは何でこんなに泣いてるんだろう。
しかもあの人じゃない、誰かの胸で‥。

この人はきっとあたしの気持ちが分かるんだろう。
そしてあたしもこの人の気持ちは分かる。



どうやって家に帰ったかは記憶はない。
頭が機能しない。思い出そうとすることも出来ない。いや、しない。
そういう、記憶に関する回路が始めからなかったみたい。

明日学校行けるかな‥‥。どんな顔して結城君に会えばいいんだろう‥。


結城君とは最近仲良くなった。千葉君とすごく仲がよくて、いわゆるイケメンというやつなんだろう。

最初は挨拶するくらいだったけど、何かしら理由をつけて話し掛けてくる。
あたしは昔から協調性が乏しく、一人でいることが多かったため、結城君が話し掛けてくれて嬉しかった。
あたしは相づちをうって、たまに笑うくらいだけど結城君はいつも話し掛けてくれた。

初めて友達らしい友達ができた気がした。


でもクラスの人が

「結城君は山田さんかぁ。」

「でもあの二人なら納得だよね。」

と話しているのを聞いた。
あんまり仲良くしすぎちゃいけないって分かってたんだ。

でもあたしは手放せなかった。一人にはもうなりたくなかった。


最低だ‥‥。


もう結城君とはあんな風に話せなくなっちゃうのかなぁ。





次の日、起きたら瞼が重たく、腫れあがっていた。
タオルで冷やしに、1階に行ったらテレビの左隅に7:30の文字が。

完全に遅刻だ。いつも7時30分に家を出る人がぴったりに起きたんじゃ間に合いっこない。

あたしは開き直って、いつもよりゆっくり支度した。どう急いでも遅刻は遅刻だ。幸い、母さんは早出らしく家にはあたし一人。


テレビではお天気お姉さんが安い笑顔で仕事していた。

「今日はとてりも暖かく、春のような天気になるでしょう。でも夕方になると天気のくずれが見え、にわかあ‥」


テレビを消して、コンポのスイッチを入れた。
朝、音楽を聞きながらコーヒーを飲む。
あたしの密かな夢だった。
何が入ってるか確かめず、とりあえず再生ボタンを押した。

軽快なメロディが流れる。どうやら一昨日聞いた洋楽らしい。

何を言ってるかは分からないけど、小さな夢が一つ叶ったことであたしは嬉しくなった。


コーヒーカップをテーブルに置き、カバンを持って家を出た。
ドアを開けた瞬間、肌を刺すような冷たい空気ではなく、暖かな柔らかい日差しに包まれた。

どうやら本当に春が近いらしい。


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