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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-76

「あうぅ……テキストが……」
 涎で泉が出来ていた。おそらく、何ページ、何十ページと染み込んでいるに違いない。
「あたし、ぐちゃぐちゃ……」
 興奮が冷めれば、残された現実が桜子を鬱にさせる。
 ショーツと秘部は愛蜜で“グチョグチョ”、全身は汗で“ドロドロ”、そしてテキストは涎、椅子は染み漏れた潮で“ベトベト”。効果音で当てはめようとするに、なんとも粘性の高い今の桜子の状態であった。
(やっぱり、ジャンキーなのかな……)
 不意に胸を行過ぎる不安。姉は“どんどんやりなさい”とは言っていたが、最近の自分はどうにも常軌を逸している気がする。“手淫狂(オナニージャンキー)”といっても、差し支えないほどに。
(この間から、なんだか濡れ方がひどいし……)
 もともとが多いかもしれないと自覚している彼女だが、それにしてもショーツから“漏れて”しまうほどの濡れ方は、どうにも尋常ではない。
(今日なんて、草薙君に……)
 口で罵られ、責められているところを想像しながら、絶頂に行き着いてしまった。
 今までの自慰の中で、桜子が想像の中で主に活用していたものは、バレー部時代の同僚が愛読していた官能小説に出てくる性描写であったのだが、現実に存在する男子に辱められながら、その映像で自分を慰めるという経験は初めてだった。
「ううぅぅぅ……」
 恥ずかしさで轟沈する桜子。
(あたし……)
 それでも、大和の笑顔を脳裏から離せない。今は、自慰に耽っていたときに見た冷ややかな表情ではなく、現実に何度も向けてくれた清浄で穏やかな笑顔の大和が桜子には見えている。
(好き、なのかな……彼のこと……)
 こんなにも欲情し、自慰のネタにまでしてしまったのだ。何か特別な感情がなければ、とてもではないが自分に許せる行為ではない。それに、濡れ方がひどくなったのは、彼に逢って以降だとも思い至る。
(わかんない……わかんないよぅ……)
 机に突っ伏して、堂々巡りの感情に思い悩む桜子。
 異性に対する憧れは、例えば義兄の龍介に感じたこともあったが、家族的なものに終始したとも言えるそれと、大和に対して抱き始めた気持ちが、果たして同じ範疇で捉えていいものなのかどうか、桜子にはわからなかった。
 違うとすれば、自慰のビジョンに龍介が単体で顔を出したことは一度もないことだろうか。必ず、姉の由梨と濃厚にまぐわっているところが浮かんでくる。
 だが、妄想にでてきた大和は、彼ひとりの存在だった。そして、彼に責められている影は、自分自身―――。
「はぁ……」
 珍しくも、考えに倦み続けている桜子。そのため、自分の置かれている現状をどうにかしなければならないという思考に、なかなかたどり着くことができなかった。
「桜子、いい?」
「!」
 こんこん、とノックがされたと同時に、由梨の断りの声が響いて、それに返事をする間もなくドアが開かれた。なんというか、姉はこういうところのデリカシーが、若干欠けている気がする。
 もっとも、桜子とは少しばかり年齢も離れているし、桜子が一歳になる前に二人の母親は亡くなってしまっていたから、由梨は彼女の姉であると共に母でもあった。そういう意識が、桜子に対する遠慮のなさになっているのだろう。そして、姉を心から信頼し敬愛している桜子も、普段はそういう面をあまり気にしてはいない。
 だが、今は状況が悪い。
「あ、ちょ、お、お姉ちゃん」
「お洗濯物、畳んだものが溜まっていたから……あら?」
 片手に山のように桜子の下着や着替えなどを手にしていた由梨は、妹の部屋に満ちている甘くて濃厚な香りにもちろん気がついた。
「オナニーしてたの?」
「あ、うぅ……」
 顔を真っ赤にして、俯いてしまう桜子。自分が自慰をしているところを、初めて姉に見つかってしまった過去が脳裏をよぎる。
「気にしなくても、いいのよ。勉強でストレスが溜まっていたのね。ごめんなさい、邪魔をしてしまって」
 しかし由梨は、相変わらず穏やかである。なにしろ、桜子に色々と性教育を施してきたのはこの由梨だ。


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