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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-71

(って、何を考えてるんだ)
 思考が反れた。大和は、火照った気持ちを沈めるように水を口に運びそれを含んだ。
「なんだか、あたしたち……ずっと縁があるね」
 桜子は嬉しそうに笑うと、乗り出していた体を引っ込める。
「そうだな、ほんとにそうだ」
 病院での邂逅から続く、目の前の少女との縁。
「運命かも、しれないな」
 大和は、戯言を言ったつもりだった。
「運命……」
「いや、あの……大袈裟だったかな」
「運命かぁ……」
「ほ、蓬莱さん?」
 軽く聞き流してくれると思ったのに、桜子はなにやら神妙な顔つきになってしまった。
 言葉が、途切れてしまう。なんというか、こそばゆい沈黙が、二人の間をたゆたう。
「………」
「………」
 そんな初々しい二人の様子は、傍目に見る分には明らかに“友達”の範囲では収まらない、薄桃色の甘い空気を纏っていた。



「ただいま」
「おう、お帰り。……あいつらは、あかんかったみたいやな」
「え?」
「雄太たちや。桜子ちゃんの顔に、書いてある」
「うん。先輩たち、負けちゃったの」
 そうか、と一言だけ龍介は漏らす。もしも桜子が、応援している雄太たちの勝利を目の当たりにしていれば、蓬莱亭だけではなく隣近所に響くぐらいの声でそれを教えてくれたはずだ。だから龍介は、今日の試合の結果が桜子にとって、残念なことになったことを悟ったのである。
「途中までは勝ってたし、屋久杉先輩も、すごい調子良かったんだよ。でも、7回にいきなり5点も取られちゃって……」
「ふぅむ」
 勝ちを意識すれば、調子の乱れも致し方のないことだ。品子がいつか言っていた“勝負の流れの見極め”をできなかったのだろう。
「品子さん、泣いてたな……屋久杉先輩も、すっごく悔しそうだった」
「………」
 勝負には必ず付物となる、そんな負の感情。そういったものを受け止め、糧にして、また気持ちを切り替えていかなければならない。
「でも、屋久杉先輩、“今度はみんなで、1部にいこう!”って、あたしに言ってくれたよ」
「おう、雄太らしいやないか」
 彼の器の広さは、龍介も認めている。そういう負の感情に囚われることなく、しっかりと物事を整理することができるその器量と度量は、雄太の良い所だ。
「あたしね、なんか燃えてきちゃった」
「?」
「絶対に、あの大学に受かって、それで、みんなと一緒に野球をするよ」
「野球だけ?」
「も、もちろん勉強も頑張るよぅ」
「ははは」
 そして、この桜子も、気持ちの切り替えはとても早い。
「と、いうわけで、あたし勉強します!」
 暗い気分はこれまでとばかりに、カウンター席から立ち上がると階段を猛烈に駆け上がっていく。その仕種と勢いが可笑しくてたまらず、龍介は頬の緩みを抑えることがどうにも出来なかった。
「よし、やるぞ!」
 そんな龍介を階下に残し、桜子は部屋に入ると、早速とばかりに机を前にして気合を高める。
 とりあえずは、センター試験で好成績を修める必要があるので、その対策用としてお世話になっているテキストを開くと、文系科目の中でも特に重きをおかれている英語から勉強にかかった。


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