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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-41

「でも、これだけ野球が上手くて、真摯で、紳士なきみやから、もう大歓迎や! 桜子、ええか、絶対にこの少年を手放したらアカンで!」
 龍介は固まっている妹の肩にも手を置くと、二人を纏めてかかえるように胸に抱いた。
「「!」」
 桜子と大和の顔が、間近になる。一瞬だけ触れ合った頬の柔らかさを互いに感じた二人。
(………)
(………)
 溢れ出す感情の複雑な絡み合い方は、互いにこれをどうやって消化したらよいものか、わからない。桜子は相変わらず茹で上がったままで、そういう視線をまともに浴びせられているような気がしてしまう大和もまた、“意識過剰”になっていた。
「こぉらぁ! 若人! そういう初々しいのは、三十路も近いあたいへの当てつけかぁ!」
「きょ、京子さん!」
 龍介から解放されたかと思えば、今度は京子が間に入ってきた。さすがは酒屋の女店主だけあって、彼女も相当に酒豪だが、今日は出来上がりが早い。どうやら、試合に勝った興奮も重なって、随分とペースを速めてしまったらしい。
「桜子」
 ぐ、と赤ら顔を寄せる京子。威圧に負けたように、桜子はたじろいだ様子を見せる。
「もう、ヤッた?」
「ぶっ!」
 その直球一本に、桜子は轟沈し、顔から火を噴いた。
「その様子じゃぁ、まだみたいね。まぁ、あたいもあんまり“初めて”は早い方じゃなかったけど、ティーンエイジのうちにはなんとかしないとね。はまると、気持ちいいよぉ〜」
 爛れるような情交を思い出しているのか、恍惚としている京子。
「昨夜なんて、旦那が久しぶりに帰ってきたからさ。何回イッちゃったか、数え切れないぐらいズッコンバッコンとおま(ピ―――)……」
「規制、規制してください!!」
 はい、しました。
(もう〜)
 由梨といい、京子といい、どうして自分の周囲はこうも性に活発な女性が多いのだろう。
「ん〜……?」
 茹だる桜子を余所に、京子は隣の大和を見る。照れの表情こそあるものの、意外なほどに彼は冷静にも見えた。
「なんか、落ち着いてるねぇ……ははぁ、さては」
 にやり、と京子。桜子を窺うように、大和の耳元に口をよせ、
(ひょっとして、経験あるの?)
 と、囁くように言って見せた。桜子に聞こえないようにしたのは、彼女を慮ってのことだろう。その辺りに気を廻せるほどには、酔っていても京子は理性が働いている。
(………)
 沈黙は、肯定の証である。おおっぴらに頷くわけにいかず、かといって嘘を言っても仕方がない。
(ふ〜ん……ごめんね)
 そして沈黙は、抵抗の印でもある。少し調子に乗りすぎて、彼の深い部分まで掘り起こしそうになった京子は、大和の顔色に翳りを見たため、すぐにその話題を引っ込めた。
(桜子って、もう、あの通り純な子だからさ。優しくしてやってよね)
「あ、あの京子さん」
 間に割り込んでいる京子と、大和の顔が寄り過ぎていることが気になった桜子。
「うふふ、ヤキモチ? 心配しないで。あたいは旦那一筋だから」
「〜〜〜」
 もう、疲れ果てて何もいえない。確かに、大和と京子の顔が近づいているのを見ていると、理由も知れないもやもやが沸いたのは事実だが…。
 そんなこんなで宴は続き、そして夜は更けていった。


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