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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-166

「………」
 その光景を見て、燃え上がったのは他の面々である。さすがに雄太は、品子の視線に恐怖を感じたので冷静さを保って(※装って)いたが、内心では密かな炎をメラメラと焦がしている。
「………」
 そして、もう一人。
 顔には色を出さないものの、他の部員たちに負けないほどの炎を上げている男がいた。
 ……岡崎であった。


「ゲームセット!」
 終始、主導権を握り続けた双葉大学の快勝で試合は終わった。スコアは以下のとおりである。

 國文大|000|000|100|1|
 双葉大|201|003|02X|8|

 8回の裏にダメ押しとも言える2点が追加されたが、これは岡崎の2点三塁打である。
 この打席の彼は、非常に集中力が増しており、まるで威嚇するように相手投手を気迫で追い込んでいた。怯んだ投手の甘いストレートを鋭いスイングで叩きつけ、“あっ”という間もなく外野を深々と破る打球を打ち放った彼は、俊足を飛ばして三塁まで達すると、珍しくも塁上で小さく拳を握り締めてさえいた。
「オカザキさん、NICE HITTTIN’& RUNNIN’!」
 雄太はそんな岡崎が、監督の“ごほうび”を受けた時に、わずかに顔の筋肉が緩んでいるのを見逃さなかった。
(岡崎のヤツめ……)
 冷静沈着で、何事にもクールな面のある岡崎の“むっつり”なところを垣間見た気がする雄太である。もっとも彼自身も、リリーフとしてマウンドに立った8回と9回をきっちり6人で仕留めたことで“ごほうび”を貰い、見た目にもわかるほど鼻の下が伸びきっていたのだが…。
「いでででで!」
 その件に関しては、しっかり品子に尻の肉を抓られていた。
『がんばったのだから“ごほうび”をもらうのは構わないが、だらしない顔をするな』
 と、言いたかったのだろう。
 ブロック戦の3試合はこれで終了した。3戦3勝という文句なしの成績を残した双葉大学は、秋口に行われる決勝トーナメントへの進出を決めたのである。
「少し間は空くけどよ、ケガとか病気とかには気をつけてくれよ」
 決勝トーナメントは、9月の頭から行われるので、かれこれ2ヶ月のインターバルができることになる。もちろんその間には、大学の前期試験もあり、夏期休暇も入ってくるので、練習もしばらくは日を跨いで行われることにもなる。
「夏のあいだのSCHEDULEは、今度のミーティングまでに用意しておきますので」
 監督であるエレナにも、勝利に浮かれた様子はない。決勝トーナメントは、ブロック戦を勝ち抜いたチームが集うのだから、いくら圧勝で進出したといっても余裕でいられるはずはないところだ。
「それでは、みなさん。おつかれさまでした」
 それでも、皆の健闘を労う眩い笑顔は忘れない。それを貰っただけでも、“ごほうび”に等しい満足感を得られた双葉大の面々。そして、次の決勝トーナメントでの戦いに向けて、その意を新たにするのであった。
(よし……)
 大和の表情にも、何かを決意した力強さが見える。久しぶりに投手としてマウンドに立ち、終盤はスタミナ切れを起こしたものの、思ったよりも肘の状態が良かったことが彼に自信を与えた。
(もう一度、鍛え直そう)
 右肘の故障から、投手としての練習メニューはおざなりになっていた。肘の痛みを恐れたこともあるし、往時の姿に戻れないもどかしさを味わうのが辛いという思いにも囚われていた。
(そういうのは、“甘え”だったんだ。僕は、甘えていた)
 気合はどんどんと高まっていく。じっとしていられないほど、大和の中には昂ぶりが生じていた。


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