『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-11
くにゅっ…
「あ、あぁっ!」
由梨の興奮を伝える、その乳首の勃起。龍介は種子のような固さを纏い始めた突端を指で弄びながら、片手で器用にも妻の上着を擦り上げて、胸の膨らみを露わにした。
「………」
羞恥に顔を染める由梨。しかし、更なる愛撫を待ち望んでいることは、右ばかりではなく左側でも勃起を強めている乳首の様子でよくわかった。
「あ、あくっ……」
左胸の先端が、龍介の口内に収まった。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅう……
「は、あっ……あぁ……」
左胸の先が、まるで吸い込まれるように引っ張られている。実際の話、龍介は、由梨の乳首に吸いついて、出るはずのない母乳をそれでもせがむように吸い続けているのだが…。
「龍介さん、赤ちゃんみたい……」
胸から広がる、たまらないほどの愛情。母性をとことん刺激され、由梨は腕を廻して龍介を抱きしめる。
「むぷっ……」
豊かな膨らみに顔を押し付けられる格好となった龍介。顔中に感じるその柔らかさは、彼女の大らかな愛情をそのまま詰め込んだように、龍介に満足を与えた。
「ああ、龍介さん……」
深い情愛に突き上げられ、由梨は夫を抱きしめている腕を、さらに強くする。
「……〜〜」
その夫の頭が、左右に蠢きだした。
「あ、あんっ、そ、そんなに動いたら……」
揉まれているのと変わらない愛撫となる。更に悶えて、由梨の腕に力がこもった。
「〜〜〜!!!」
龍介のもがきも、強くなる。何しろ彼は、由梨の豊満な胸に頭を丸ごと埋められているのだ。
「!!!」
つまりは、呼吸が困難なのである。
「ッッッ……―――」
もがく動きが散漫になったかと思うと、左手が何かを求めて高々と天をつき、そしてばたりと落ちた。
「? 龍介さん?」
事ここに至り、由梨もようやく夫の様子に気がつく。腕を解き、龍介の体を“拘束”から解放すると、のぼせ上がったように顔を赤紫に染めた龍介が、由梨の左胸にかぶりついたまま意識を朦朧とさせていた。
「ん〜……」
ベッドに横になったものの、なんとなく眠れないまま時を過ごしていた桜子。寝返りを何度となく繰り返しても、睡魔が一向にやってこない。
どうしようもないので身を起こすと桜子は、龍介からもらった、古びたグラブと軟式ボールを手に取った。途端に、別の場所で見つけた宝箱と鍵がぴったりと合わさったかのような、これ以上のない心地よさを得ることができて、桜子はにんまりと微笑む。
「ふふっ」
とことん野球が好きなのだ、彼女は。使い古されて、ボロが目立つグラブをそれでも、毎日欠かさず磨いているぐらいなのだから。
桜子は無意識に、そのグラブを左手にはめていた。
ばすばす、と何度も軟式ボールをグラブに放り込みながら、来週の日曜日に想いを馳せる。
「あ〜、早く日曜になんないかな♪」
義兄の龍介が発足し、その代表となっている草野球チーム“ドラフターズ”にメンバーとして参加したのはつい最近のことだから、桜子はまだ試合に出たことがない。しかし、彼女の怪力は既に練習でのバッティングで比類なき威力を発揮していたから、野球を本格的に始めてわずかにも関わらず、“ドラフターズ”の主砲として、次の試合では活躍を期待されていた。