Cross Destiny
〜神竜の牙〜B-7
「とにかくその魔導士を倒さなくては活路は見出だせないわ。」
「そのために俺達が来たんだ。」
ヴェイルは親指を立てながら力強く言い放つ。
「ええそうね、確かに今回は下手に小隊をよこされるより、あなたが来てくれて助かったわ。」
「いやあ」
照れたように頭を掻くヴェイル。
「兵力差は大きいけど、その魔導士を倒してくれれば後は私が何とかするわ」
「さっすが!それにしてもそいつが黄泉羽の一人だとしたら既にヒーティアとホーリィは手を結んだってことか?」
「だってヒーティアとリィズの戦争の時だって黄泉羽がヒーティアに手を貸したのよね?
だとしたら数年前から既に手を組んでたってことよ。」
「そりゃそうか」
「ウィン!ウィン!!」
ウィンと言う名の一人の少年魔導士を呼ぶヒーティア軍の司令官。
「・・・・はい」
司令官の前にひざまづくウィン。
「こちらの態勢は調った。
後はお前待ちだ。
魔力は回復したのか?」
「・・・・はい」
「そうか、なら明日の朝に奇襲を仕掛ける。」
「策も無しに・・・ですか?」
下を向いたまま聞き返すウィン。
「こちらの方が兵力は上だ!下手な小細工は無用だ。」
「しかし、敵の軍師はただ者ではありません。
策も無しに突っ込めばやられかねません」
「ただ者では無いからこそ策など無意味なんだ。それに勢いはこちらが上。
お前は余計なことを考えずに命令を聞いていればいい!
それとも文句でもあるのか?」
「・・・いえ、ジェラルドを滅ぼせるのなら僕はなんでもかまいません」
悲しげな表情をするウィン。
「とにかく明日の朝、残りの兵力七万を一斉突入させる。」
ヒーティア軍の司令官はウィンにそう言った後、振り返り去って行った。
翌日の朝、ハロルの都で待機するアルス達は赤の塊が押し寄せてくるのを見た。
「来たわ、あのヒーティア軍の先頭に立っているのが昨日言った魔導士よ」
そのフィオの言葉にアルス達はその魔導士に目を向ける。
迎え撃つアルス達とジェラルド軍。
そしてアルスとフォルツは押し寄せてくるヒーティア軍の先頭の少年魔導士が知った顔だということに気付く。
"ワアアアア"
「ウィン!ウィンじゃないか!」
両軍が激突する中フォルツはその少年に語りかけた。
「フォルツ・・・さん
それにアルスさんも」
目を丸くして二人を見るウィン。
「なんでヒーティア軍なんかに参加してるんだよ!?」
「それはこっちの台詞です!なんでフォルツさん達がジェラルド軍なんかにいるんですか!!」
「事情があるんだ事情が!!」
フォルツは事情を説明したかったがこの状況ではそれも叶わなかった。
「何をしているウィン!!とっとと攻撃しろ!!」
ヒーティア軍の司令官がウィンに激を飛ばす。
「くっ、とにかく僕はジェラルドを倒す!
それを邪魔するというなら例えアルスさんとフォルツさんでも倒す!」
ウィンはアルス達を含め、ジェラルド軍に杖を向ける。
「アイスエッジ!!」
「うわああぁ!!」
ウィンの氷の下位呪文がジェラルド兵達を次々と貫いていった。
「くっ!ウィン本気か?」
躱したとはいえ、ウィンが自分達に向かって本気で呪文を放ったことにアルスとフォルツは動揺した。