Cross Destiny
〜神竜の牙〜B-6
都は周囲を高い壁に覆われていてとてもではないがそこを昇ることはできない。
ジェラルド軍の拠点の都のことはある。
三人は唯一の門から入ることにした。
閉ざされている巨大なその門の前には数千ともいえる兵達が待機している。
ヴェイルは胸にしまっているジェラルドの紋章を見せると兵達が門までの道を開けた。
そして門の前までいくとジェラルド兵が数百人掛かりで巨大な門を開けた。
"ギィー"
という音と共に門が開かれ、三人は都の中へと進む。
中にも、遠くから見たようにジェラルドの大軍が待機していた。
「あら、援軍かしら?」
するとジェラルド兵達の奥から一人の女性が歩いっきた。
短い髪の美しく賢そうな女性だ。
「お、おう
助けにきたぜ。戦況は?」
少し動揺したように返すヴェイル。
「あまり良くはないわ、ヒーティア八万に対してこちらは六万、既にお互い一万程の兵を失っているわ」
「で、ヒーティア軍は?」
「ヒーティア軍はなんとか退けたわ、だけどいつまた進軍してくるか・・・
ところで援軍は?小隊一つくらいは回してくれたんでしょ?」
ヴェイルは指を三本立ててその女性に見せた。
「え?3小隊も!」
その女性は驚きに満ちた笑顔で聞き返した。
そしてそれを見て気まずそうな顔をするヴェイル。
「・・・いや俺達3人だけなんだが」
「さ、三人!?そんな!!」
女性は絶句した。
「大丈夫、俺は一騎当千だからな。それにお前だけは必ず守る」
ヴェイルは顔を赤らめながら臭い台詞を言う。
「なるほど、あんなに御機嫌だったのも、めちゃくちゃ急いでたのもこの人に会うためだったのか」
「惚れてるってやつですか。」
アルスとフォルツが耳打ちをしあう。
「もうヴェイル!そんな冗談言ってる場合じゃないでしょ!それで?この人たちは?」
女性がアルスとフォルツの存在に気付いてヴェイルに尋ねた。
「こいつらはアルスとフォルツ、俺と同じジェラルド専属の傭兵だ。こう見えてもあの黄泉羽と渡り合えるほどの実力だ。小隊一つ持ってくるよりよっぽど頼りになるぜ。」
ヴェイルは自信たっぷりに二人を紹介した。
「そう、あなたがそう言うのならきっと頼りになるのね。
私はフィオ、一応ジェラルドで軍師をしているわ、よろしくね」
フィオはぺこりと軽いお辞儀をした。
「それにしてもどうした?お前ほどの奴がたった三万程度の兵力差をひっくり返せないなんて」
ヴェイルはジェラルド軍に所属している。
そしてジェラルド軍に所属している者なら誰でもフィオの軍師としての実力を知っている。
だからヴェイルは不利とはいえ苦戦しているフィオを不思議に思った。
以前も奇襲を仕掛けてきた一万のヒーティア軍をニ千の兵力で倒したという功績はジェラルドの中で伝説となってる程だ。そしてだからこそデェルフェムートも最小限の援軍だけを送ったのだった。
「ええ私もまさかここまで苦戦するとは思わなかったわ」
爪を噛みながら悔しそうな顔を見せるフィオ。
「敵に強力な魔導士がいてね、その一人の魔導士によって大きな被害を出した。普通の兵士じゃ歯が立たないのよ。
それでもなんとか被害状況は互角にまで持っていって一時撤退させたんだけどこのまま行けば確実に負けるわ。」
その話を聞いてハッとする三人。
「まさか・・・黄泉羽!?」
そしてアルスがつぶやく。
「・・・解らない、黄泉羽なのかしら・・・でも少年だった
丁度あなたたちより三つか四つ年下くらいの」
フィオはアルスとフォルツを見ながらそう言う。
「そんなガキが?」
それを聞いて耳を疑うフォルツだが、自分よりも年下であるだろう、しかも女であるアシェルのことを思い出し、妙に納得してしまった。