Cross Destiny
〜神竜の牙〜B-15
「・・・・・」
「あなたは賊や黄泉羽の人達とは違う。
あなたはいつも、口では強がったり
自分は『無関系だ』みたいなことを言うけど
・・・・私には解る。
あなたはいつでも苦しんでる人を思ってた。
そしてそういう人のために苦しんでた。
あなたはきっと・・・・・誰よりも優しい。」
そう言いながら微笑むルナを見て、アルスは自分の胸の鼓動が僅かに高鳴ったことに気付く。
「だから私は、あなたといると・・・・・ほっとします。」
「・・・ルナ」
「馬鹿な、俺を協力させるためにそんな嘘を!!」
フォルツはアシェルの両肩を掴みながら言う。
「いいえ、事実です。
その顔、黒髪、亡き王妃にそっくりです。
そしてあなたのその黒き光
闇呪文が何よりの証拠です。」
「くっ!」
「あなたの父、アレスター様がお待ちです。
フォルツ様・・・いえ、ホーリー王国王子アルベル様」
(俺はそれからのことは漠然としか覚えていない、その後アシェルが「今日はこれで」と言って何もせずに去っていったこと、
その後薪を拾ってアルス達の所に戻ったこと。
魚を食って城に戻って
普通にここにいるのか)
フォルツはベットに仰向けになりながら一日を振り返りる。
(アレスターが俺の父?俺は・・・・俺の名は・・・)
そして事実を完全に受け入ることはできず、ただ頭の中で繰り返すことしかできなかった。
まるでパニックになった動物が同じ行動を繰り返す様に。
《「あいつには近づくなよ、何されるか解らないぞ。」
「まったく厄介ね、あんな得体の知れない気味の悪い子が住み着くなんて」
「あいついつも同じ場所に腰掛けてるな気持ち悪い。」
「捨て子なんだってよ可哀相に。」
(僕は何でここにいるんだ?
僕は何で一人ぼっちなんだ?
僕には何で父さんと母さんがいないんだ?
僕は・・・・なんで)》
「とう・・・・さん」
「フォルツ!おいフォルツ!!」
「!!」
アルスが自分を呼ぶ声に飛び起きるフォルツ。
「大丈夫か?」
アルスはうなされていたフォルツの心配をした。
「あぁ、何か夢見てたみたいだ。」
「もう朝だぞ。起きろ。」
「ああ」
フォルツは目をこすりながらベッドから下りる。
「国王が呼んでるから、王座の間に行くぞ、明日の進軍の事だ。」
フォルツはアルスに急かされ、急いで着替えと洗顔をすませすぐに王座の間に向かった。
「おう遅かったなフォルツ。」
王座の間にはデェルフェムートとその横にヴェザードとデュセル。
そして正面にはヴェイルとフィオ、そしてルナも立っていた。
フォルツとアルスはその隣に立つ。