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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-92

 翌日―――――。
 法泉印大学との試合が行われる公営球場は、今まで試合をしてきたところに比べると、手狭ではあるが新しい印象を受けた。数年前に行われた国民体育大会の折に開設されたものらしい。以降、中学野球の地区大会や、草野球などでよく使用されているということだ。
 天候は至って晴天。外野の芝も目に眩しいほど、太陽が照りつける。
 そんな中、試合は始まった。
 先攻は城二大。そして、その打線がいきなり炸裂する。
 1番の長見が三塁ライン際を抜ける三塁打を放ち、2番の斉木がこれを内野安打で返し先制。直樹のセンター前ヒットで塁を二つ埋めた後に、亮の3点本塁打が飛び出して、開始10分にも満たないうちに瞬く間に4点を奪った。
 エレナは当たりのいいライトライナーに倒れたが、続く原田が自身初となるレフトスタンドへの本塁打を放ち、初回だけで5点を奪ったのである。
 その後も猛攻は続く。6回を終了した時点で、13−0と相手を圧倒していた。とても昨季、成績が下回ったチームとは思えないほどの横綱相撲ぶりである。

 ブンッ! バシィ!!

「ストライク! バッターアウト!!」
「おお!」
 沸いたのは法泉印大学のベンチだ。ちなみに、打席に立っていたのは、チームメイトである。味方の三振に沸くというのもおかしな話だが、それだけインパクトのある光景を目の当たりにしているということだ。
「バッターアウト!!」
「おぉ…」
「バッターアウト!!!」
「………」
 いつしか声さえなくなった。7回の裏に記される自軍のスコアボードには、またも0が並ぶ。
 記録員が、これまでのスコアに目を落とし愕然としていた。相手チームである城二大のページは、黒い線が乱雑になってしまうほど何重にも引かれているのに、自軍のページはいたってシンプルに収まっている。
 三振、17。内野ゴロ、4。安打・四死球ともに、0。
 そう。いま、彼らは、完全試合のペースで劣勢に陥っていた。
「よっしゃ、いけいけや!」
 かたや城二大のベンチで沸くのはムードメーカーの赤木。
「晶ちゃん! ホームランならサイクル安打や! いっちょ、狙ってや!」
 打席に向かう晶の背に、声援を送る。
 ちなみにサイクル安打というのは、ひとりの打者が一試合で、単打・二塁打・三塁打・本塁打のすべてを放つという離れ業のことである。
 晶は最初の打席で三塁打を放った。次の打席は四球を選び、三打席目に単打を、四打席目に二塁打をそれぞれ打っている。9番打者である彼女が、5度目の打席に入るのだから、この試合において、いかに城二大の打撃陣が好調であるかわかっていただけよう。
 晶が左打席に入った。相手の投手は、3人目に代わっている。しかし、試合の始めには一塁を守っていた選手だったので、本格的な投手ではないのだろう。
 見送った初球のストレートは、威力・スピードともに、これまでの投手を下回るものだった。



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