投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 241 『STRIKE!!』 243 『STRIKE!!』の最後へ

『STRIKE!!』(全9話)-242

「ウグゥ!」
 ここでもベースに頭から飛び込んだ長見。その背中に、鈴木の負いタッチが強烈に圧し掛かると、

 ミシッ……ピキッ……

「!?」
 自分の体の奥から、何かが軋んで欠けるような音が聞こえた。
「セーフ!」
「むむ……」
 面白くなさそうに、鈴木が立ち上がる。土埃で汚れた胸元を払いながら守備位置へ戻ろうとした彼は、なかなか起き上がらない長見の様子に気づくと、慌てたように彼の近くへ顔を寄せた。
「おい、どうした?」
「……なんでも、ねえッスよ」
 長見はむくりと起き上がる。顔中を砂にまみれさせながら、それを拭おうともせずに彼は、三塁ベースを踏みしめていた。
「………」
 鈴木は帽子を軽く取って、荒っぽいタッチになってしまったことを詫びる。長見はそれに会釈を返すことで、気にしていないということを伝えた。そんなことにいちいち気を廻していられるような状態では、ない。

 ズキ、ズキ、ズキ……

(い、いてぇ……くっそ……いてぇんだよ、これが……)
 嫌な音が響いてから、いよいよ痛みが激しくなってきた。息をすることさえも困難なほどに、その痛みが喉の奥からせりあがってくる。
「ボール! フォアボール!!」
 そんな彼を余所に、試合は続く。一死一・三塁で迎えた4番の亮は、フルカウントの末に四球を選び、これで満塁になった。
 迎える打者は、5番のエレナ。またとない好機に、城二大のベンチは大いに沸いている。そんな様子をまるで人事のように見ながら、長見は苦痛を堪えていた。
 初球にフォーク。二球目にストレート。三球目、四球めとフォークが続いて、五球目。
 外角にストレートが放たれた。フォークを頭に入れていたエレナはやや振り遅れ気味ではあったものの、その球を外野まで運んだ。その腕の力だけで、京子の重いストレートを打ち放ったのだ。
(……犠牲フライ)
 長見はその打球があまり伸びないのを察知し、三塁ベースに留まる。相手の左翼手は、かなり余裕をもった状態で、すでに両手を広げていた。
(微妙な、位置だけどよ……)
 浅いとも、深いともいえない飛球。それでも長見は、相手の左翼手のグラブにボールが収まった瞬間、ダッシュをかけた。
「!」
 わき腹に走った激痛。それを無理やり押し込んで、彼はホームベースを目指す。左翼手からの矢のような送球が、津幡のミットを正確に捉えている。

 ズキ、ズキ、ズキ………

「うわぁぁぁぁ!!」
 込み上げてくる痛みを逃がそうと、雄叫びをあげる。そのまま、ホームベースをしっかりと左足でブロックしている津幡に体当たりをするように、長見はここでもヘッドスライディングで飛んだ。

 ドンッ!

「!」
「!!」
 津幡のブロックが崩れたその隙を突くように、左手でベースに触ろうとする。それをさせまいと、ボールを捕球した津幡のタッチが、長見の背中に襲いかかった。



『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 241 『STRIKE!!』 243 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前