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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-236

「ボール!」
 際どいところだ。だが、余裕のある投手の様子から見るに、初めからボール球を要求していたのだろう。
(外側で、緩めの球を見せておいて…)
 またインコースに速球を繰り出してくる。津幡は、それを狙った。
 三球目、それは、やはりインコースへ。
「!」
 だが、コースが外れていた。なんと、二球も続けて見せ玉を使ってきたのだ。
「くっ」
 “インコース”という勘があたり、嬉々としてボールを振りにかかった津幡はその勢いをとめることはできなかった。

 ゴツッ!

 芯を外れた打球がサードの正面に飛んだ。それでもそれなりの強さを有した打球であるというのは、彼の筋肉が作り出したバネの効果があったからだろう。
 しかし、それは逆に、相手にとって最高の結果となる併殺を奪うには申し分ない打球となってしまった。
(打たされた!)
 一塁へ駆け出す津幡。狙い目の球が来たとはいえ、安直に手を出しすぎた。
「!」
 しかし、ちらり、とサードを見遣った津幡の視線に思いがけない光景が入った。なんと、真正面の打球であるにも関わらず、相手の三塁手がこれをファンブル(お手玉)してしまったのだ。
 グラブには捕球したようだが併殺を焦ったのか、送球するために持ち替えようとしたそのボールを掴み損ねたらしい。
「エレナ! 投げるな!!」
 それを見た瞬間、亮は指示を出していた。焦ったように握り直したエレナはその言葉をきくや、始めかけていたスローイングを止める。
 京子は既に二塁に達し、そして、津幡もまたベースに届く寸前だ。送球したとて、結果は同じ。こうなってしまうと何より怖いのは、悪送球によってその走者をさらに進塁させてしまうことだった。そして、エレナはあまり一塁への送球に慣れていない。
「………」
 一死一・二塁。この試合、両チームにとってはじめて得点圏に走者を置いた。
「SORRY……」
 ピンチを迎えた城二大のマウンドに、内野陣が寄る。併殺の好機を、自らの失策で逃したばかりか、逆に危機を広げてしまったエレナが申し訳なさそうに俯いていた。
「こらこら、そんな顔をしていたらまたエラーしちゃうぞ」
 晶はそれを責める気など、毛頭ない。そもそも、エレナにはこれまで攻守にわたり何度となく助けられてきたのだから。
「少し、ツキがなかっただけだって」
 新村の言葉だ。斉木も原田も、エレナを責めることはせず、しきりに頷いている。
「みなさん……」
「一死だから、セオリー通りなら送りでくるところだ。……ただ、あの2番には緒戦にバスターエンドランでやられたことがある。守備位置は、そのままでいこう。定石どおりにバントできたら、無理に封殺を狙わないで、ファーストでアウトを取ればいい。彼はそんなに脚の速い選手ではないから、無理なダッシュは必要ないよ」
 1点を恐れて走者を溜め込んでしまうことは逆効果。むしろ、バントでくるならそれで一死だけを稼げればいいと考えてくれ、と亮は後に続けた。
 応、と皆がそれに答え、野手陣はマウンドに晶を残し、散っていく。
「………」
 2番の風間が打席に入った。構えを見る限り、送りの気配はない。
 亮は、内角を要求した。サウスポーからの斜角では、バントのし難いコースとなる。
「ストライク!」
 風間はバントをするような素振りも見せず、それを見送っていた。
(強攻でくるか)
 櫻陽大学も、むざむざと一死を差し出すつもりはないらしい。


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