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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-205

「ン、ンッ……く、くすぐったいですエイスケ……」
 長見の指使いに揺らめき、湯の中で震える乳房。エレナは緩やかな刺激に、しかし、その顔を赤らめて官能の酔いを感じ始めている。
「ちゃんと、洗ってから……ンッ……ダメですよ、エイスケ……あ、あンッ……」
 やめられない、とまらない。
 どこぞの菓子メーカーの、あまりに有名な謳い文句が頭から離れなかった。
「もう……オイタはダメです」
「おわっ」
 エレナがそんな長見の肩に両手を添えると身体を簡単に反転させ、そのまま彼の後頭部を胸の谷間に潜り込ませた。“乳枕”とでも言うべき体勢である。
(くわぁ……)
 後頭部に、絶品ともいうべき心地よすぎる感触が。甘さと、柔らかさと、暖かさと、優しさと、およそ母性に存在する全ての感情が、そのふくらみにあった。
「じっとしていてくださいね……」
「………」
 エレナが洗髪剤を手に塗し、長見の髪の毛をもしゃもしゃと洗い始めた。すぐさま泡立ちが彼の黒い髪を覆い、彼女の大きな手が頭皮をマッサージしながら優しくそれを梳っていく。
(ひぇぇぇ……)
 気持ちよすぎる。
 頭皮の細胞ひとつひとつが、歓喜の震えを起こしている。それは、自分でもよくわかった。
 考えてみればエレナと一緒に風呂に入ったのは初めてだ。ア×ル・セックスの準備のときに、何度かバスルームで数々の行為に及んだことはあったが、こうやって湯船に同時に浸かったことはなかった。
(や、やべぇ……)
 こうまで気持ちいいと、もう一人では入れないかもしれない。普段でさえ彼女に甘えっぱなしなのに、どうやらまたひとつ主導権を相手に渡してしまったような気がする。
「うふふ……エイスケ、カワイイ……」
「………」
 男の矜持が。しかし、長見は既にエレナの母性に心身を余さず委ねており、その享楽の虜になっていた。
「さあ、終わりましたよ」
 ざば、と頭から湯を浴びせられる。洗剤を洗い落とされた髪の毛と頭皮に、エレナの丁寧な指使いを惜しむような寂しさを感じた。
「………」
「えいっ」
 ぎゅ、と頭を抱かれた。軽くのせられていた乳房に、長見の後頭部が深く沈みこむ。
「エ、エレナ……」
「うふふ……エイスケ、カワイすぎます……」
 胸に抱きしめられて、ゆらゆらと湯の中をたゆたう。まるで夢の世界でも体験できないような甘い空間に、長見は完全に酔いしれた。
「お、俺もうダメかもしれねぇ……」
「なにがですか……?」
「お前といないと……俺、もう耐えらんねぇよ……」
「あっ」
 力の緩んだ隙を見計らって、長見がもういちど向き合う体勢になる。しかし、間を取るのではなく、そのまま顔をエレナのふくらみにもぐりこませて、まるで幼子が甘えるように彼女の身体にしがみついた。
「エイスケ……」
 ぎゅう、と更に強く抱きしめられる。
「どうしたんですか?」
「すげぇ、気持ちいいんだ……」
 本当に小さい頃にしか覚えていない母親の記憶が、驚くほど鮮明に浮かび上がってきて、長見は湯とエレナの体温の熱さにのぼせそうになりながらも、そこから離れることができなくなった。
「………」
「あンッ……」
 ちゅぱ、と乳首を噛まれた。噛まれたというよりは、吸われたという方が正しいか。
「ン、ンッ……エイスケ……ンッ……」

 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…

 と、まさに赤子に吸われているように、自分の乳首から感じる長見の口内の感触。吹き上がってくるような愛しさが胸に溢れて、エレナは涙が出そうになった。


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