『STRIKE!!』(全9話)-204
「ちょ、ちょっと……こんなとこで……みんなも、見てるのに……あっ」
というより、実際に抱きしめられた。あまりにも積極的過ぎる彼の行動に、晶はうろたえっ放しである。
「こりゃ、木戸。部屋に帰るまで我慢せんかいっ」
当然、赤木の茶々は入るが…。
「赤木さん! いけますよ!!」
「な、なにがよ」
しかし亮は、喜色満面に赤木の方を向くと、腕に抱えていた晶の身体を宙に浮かせていた。
「きゃっ」
「晶がいた! 晶なら、きっとやってくれますよ!」
「ちょ、亮っ。きゃああぁぁぁぁ―――――………」
宙に浮かせたまま、亮は回転をする。
「木戸……あのー……」
いきなり始まった二人の戯れに、どう突っ込みを入れていいのやら思い悩む城二大の面々であった。
「木戸のヤツ、どうしちゃったんだろうなぁ」
長見はエレナの部屋でくつろぎながら、くつくつと腹を抱えていた。
「さすがに晶、泡食っててよ……ちょっと、面白かった」
「エイスケ、お人がよろしくありませんです」
そういうエレナも頬の緩みが取れないでいる。お互いに顔を見合わせて二人の様子を反芻し、もう一度、笑いで部屋を満たした。
「キャプテンの怪我ってのが気がかりだけどよ……次の試合はなんとか勝ちたいぜ」
「そうですね」
そうすれば、優勝できる上に、甲子園で戦うこともできる。負ければもちろんその夢は萎むし、引き分けでも勝ち点では及ばないから、城二大は勝つことしか許されていない。
「俺も……あんときの借りが返せるってもんだ」
開幕戦で敗れた試合の、最後の打者になった記憶はまだ鮮やかに残っている。あの時は自分の打力に自信が持てず、バントに逃げてしまったが、今度はしっかりと最後までスイングしてやろうと、長見は意を固め気合を高めていた。
「あまり力を入れてはいけませんよ」
「うん、そうだな」
“力み”は長見のウィークポイントだ。エレナが常に、打撃の時には心がけるよう指導してくれたおかげで、その癖は余程のとき以外は出なくなってきていたのだが。
「気合の入りすぎも用心です。怪我の元ですから」
「ああ……じゃ、まあ、のんびりと風呂でも入るわ」
長見はそういうと身を沈めていたソファから立ち上がった。エレナは泡風呂にして入るのが習慣なので、あまりそれに慣れていない長見は、先に風呂をもらうようにしている。
「エイスケ」
「ん?」
不意にエレナが呼び止めたので、長見はバスルームに向いていた足を止め、頭だけで声に応えた。
「ME TOO……」
「PARDEN?」
「あの、おフロ……一緒に入りたいです」
それに“否”と答えられる長見ではなかった。
ハイツ大崎のファミリールームは、それなりに風呂場が広い。とはいっても、バスタブそのものは大きいとはいえないから、やはり二人まとめて入浴するには、やや手狭である。
「わ、わわ……」
それを証立てするかのように、長見が湯に入っているところへエレナが身を浸すと、ざぶ、と一気にお湯が溢れ排水溝へと姿を消していった。
「OH、もったいないですね」
長見の身体に抱きつくようにして、エレナは湯船の住人となっている。そのダイナマイトボディを鼻先に突きつけられて、長見は一気にのぼせそうになった。
(は、はう〜……)
「?」
長見は、水面に浮いて揺らめいているエレナのビッグ・バストから目が離せない。なんというか、ベッドの上で揺れる様とは全く異なるその動きに魅入られていた。
「……あ、あンッ」
無意識に、手は伸びる。男ならばそれは至極当然の欲求であり、それに準拠した行動を誰が責められようか。
「や、やらけえなぁ……」
たぷたぷ、ふにふに…