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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-200

「もうすぐ赤木が来る。そのときに色々話をしよう。これからのことを考えないといけないから」
「うん……わかった……」
 直樹宛に着信のあった携帯電話(※個室での使用は認められていたので電源が入っていた)を玲子が受け取ったところ、それが赤木だったので、直樹は簡単に事情を話すと、すぐに来て欲しい旨を伝えた。深夜でありながら赤木はすぐにそれを聞き入れてくれて、今はこちらに向かっているところである。
「………また、アイツに頼ることになるな」
 しばらくチームを不在になる現実の中、直樹が最も頼るべき人間は、既に決まっていた。



「なんで、そんなことになるんだよ!!」
 翌日…。
 直樹が負傷したことは、すぐに城二大の軟式野球部員の知るところになった。話の全貌は、直樹に“明日の練習は遅れそうになる”と連絡をいれようとして電話をしたことから事件を知った赤木によって語られた。
 その話にもっとも憤慨を顕にしたのは、いつもは冷静なはずの亮だった。
「赤木さん……間違いじゃ、ないですよね……」
「残念やがな。二人を襲ったのは、松平はんや」
 なにしろ、本人から話を聞いている。また、今朝ほど赤木が確認した新聞の中では、その事件を取り上げているものもあった。そこに書かれていた暴行未遂及び傷害、さらに猥褻物陳列罪を加えて逮捕された容疑者の名前は“松平恭二”。間違いなく、元エースの姓名で、その年齢も合致している。
「二人とも、まあ、元気ではおったけどな」
 深夜を少し廻っていたので、直樹の携帯に電話をかけたのに、それに玲子が出てきた時点で不穏なものを感じた。すぐに代った直樹からことの次第を聞くと、彼に頼まれるまま病院に駆けつけた赤木である。
「キャプテンの怪我やけど……」
 とりあえず、傷口が塞がるまで激しい運動はご法度であるという。なるべくなら、歩くことも避けたほうがいいとのこと。
「ちゅうわけで、ワイがいろいろ言伝をもらってきた」
 玲子はそれに付き添うことを強く望んだので、赤木は二人に代わって事情を皆に話す役目を請け負った。ただ、玲子が襲われたのではなく、二人が襲われたという話に変えることをお互いに確認しあって…。
「なんで……」
 昨年、誰にも何も言わず退部し、退学した松平が、なぜにそんなことを。
「なんでなんだよ! なんで、松平先輩が、そんなこと!!」
 一度はバッテリーを組んだことのある先輩の凶行に、亮は言い知れぬ悲しみと怒りに自分を見失っている。
「……松平はんな、監督に惚れとった」
「!?」
 亮の憤りを押し込めるように、赤木はことさら静かに話を始めた。
「昨年の話やけどな。リーグ戦が終わったら、言うつもりやったらしい」
「どうしてそれを?」
 隣に座っている原田が問うた。
「松平はんは、ワイには何故かことのほか親切でな。いろいろ話をしとったんよ」
「………」
「ほんまなら、松平はん、いい結果残してから告白するつもりやったらしいけど」
 リーグ戦は最下位に終わり、独裁的にチームを率いてきた彼は皆からの信望も薄い。従って、玲子が彼に感じる魅力は残念なことに何ひとつありはしなかった。
 それでも松平は、玲子に思いを告げた。彼の中では、大決心だったはずだ。
 しかし、
「結局、断られたみたいなんや。玲子はんやから、しっかりとそのあたりは説明したんやろうけど……」
 どちらかというと気が短く、傲慢だった松平である。自分の思うとおりの結果にならないと、平静ではいられなくなることが往々にしてあった。


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