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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-20

 ブン……

 一閃したバットは空を切り、思い描いた打撃音は、ミットを貫く音に変わっていた。
「…………」
 手元で、球が伸びた。明らかな振り遅れである。
「これで1.5とかいう話です」
 亮は、マスクを被り直す。
「次は、MAXでいきます」
 そう言って、気合の入った構えをして見せた。つまり、そうしなければ取れない球だということだ。
(今以上の、ストレート………)
 この時点で、直樹は負けていた。思わず、肩に力が入ってしまう。力みのなさが信条の、直樹の構えに乱れが出てしまっていた。
「木戸、ちゃんと捕りなよ!!」
 笑顔でそう叫び、大きく振りかぶって投球を始める晶。今までよりも、大きくしなやかな投球フォームから、さらに鋭いストレートが繰り出された。
「!!」

 ズバンッッ!!

 それは、息の呑む間もなく、亮のミットへ吸い込まれた。比較にならない爽快な音を残して。
「は、はえ〜……」
 内野に陣取る野手たちの呟きだ。かつてのエース・松平のそれとは明らかに質の違う球に、すっかり魅了されていた。
「あ〜あ」
 違う意味での嘆息は、長見だ。とりあえず空きポジションであるセンターの浅い守備位置から、どうにも面白くなさそうな視線をマウンドに寄った亮と楽しげに話す晶に向けている。
(ちっ)
 別段、晶に対して特別な感情を抱いているわけではなかったが、賭け試合に興じていた頃は盟友に似た思いがあったわけで、それが嫉妬の情を起こしている。
(それにしても……)
 晶の全力ストレートである通称“レベル2”の直球を、こともなげに捕球してしまった亮の実力は認めないわけにはいかない。
(モノが違うってか……)
 今度は諦めのため息をついた。自分で亮に勝てるとしたら、逃げ足の速さくらいかもしれないな、と微かな矜持をそこに見るしかない長見であった。





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