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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-19

「近藤晶です、よろしくお願いします!」
 真新しい城二大のユニフォームを着た、元気いっぱいの晶。
「あー、長見栄輔です……」
 ユニフォームが合わず、草野球のときの格好をしている長見。
 部員8人という、試合さえできない壊滅的な状況だったチームに、これでベンチ入り選手までの登録が可能になった。そのためか、チームメイトたちは非常に好意的にふたりを迎え入れた。
 もっとも、その新入部員が女の子で、しかも、野球通には名の知れた『甲子園の風』のモデルだということもあるだろう。
「とりあえず、入れ替え戦には臨むことができる。試合まで、時間はないが、みんな、がんばろう!」
 キャプテンである直樹の掛け声に、おおー、と声を返す部員たち。危機的な状況にもかかわらず、野球部に残ったある意味精鋭たちだ。松平を失って以降、部を見限って抜けていったレギュラークラスの選手たちより当然上手くはないが、野球に対する真摯な姿勢が、直樹は頼もしいと思う。
「ほんとは、紅白戦でもして……」
 投手である晶の力量を見定めたいし、試合勘も養いたいところだが、部員10人では、いかんともしがたい。
「キャプテン」
 そんな直樹に、いまやチームの主力である亮が提案する。
「とりあえず今は、来年を見据えて個々のレベルを高めるのが一番だと思います」
「悠長だな」
「でも、近藤の球を見れば、安心できるし、期待もできますよ」
「ふむ……じゃ、試してみるか。近藤、ひと勝負と行こう!」
「はい!」
 直樹の提案に、やはり元気な声で晶は応えた。彼女は、賭け野球とは全く違う形でできる久しぶりの野球に、心底ワクワクしていたのだ。

 フリーバッティングの形を取って、練習は開始された。
 マウンドには当然、晶がいて、それを受けるのは亮。初めて組んだバッテリーの相手は、チームのキャプテン・高杉直樹。バットコントロールの上手い、巧打者である。
 その直樹が、左打席に入った。
「実戦形式だ。遠慮はいらない」
 そして、バットを構える。そのコンパクトな構えは、何処からでも早いヘッドスイングで球を捉えることができる。
「それじゃ、いきますよ!」
 晶が大きく振りかぶった。そして、しなやかに右足が高々と上がる。細身の身体からは想像もつかないダイナミックな投球フォームから、直球が繰り出された。
「!」

 スパンッ!

 一本の光線を描いたような軌跡を残し、ボールは小気味のいい音を残して亮のミットに収まった。
 心地のよい痺れが、亮の手に走る。
(これが、近藤の球か……)
 かつて憧れた投手の球を、こうやって直に受けられたことが亮には嬉しく思えた。打者として対戦し、それを打ち放った時とは違う昂揚感が胸に溢れてくる。
「速いな」
 初めて打席でその球を見た直樹のつぶやきは、かつて亮も口にした言葉だった。
「今ので、レベル1ぐらいだそうです」
「? なんだそれは?」
「速さのバロメーターですよ」
 ボールを晶に返しながら、亮は言った。
 合点の行かない表情をしながら、直樹は2球目を待つ。最初は目慣らしのため、もとより振る気はなかったが、今度はコースしだいでは打つ気でいた。
 そして、2球目が投じられた。コースは、真ん中。球種はやはりストレート。
(甘いな!)
 直樹は、バットを振る。最初の球筋から計算するに、タイミングは合っている。コースを散らされなければ、バットコントロールに自信のある直樹の打てない球ではない。
 そのはずだった。



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