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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-131

 露天で買ったクレープを片手に、ストリートミュージシャンの演奏に耳を傾け、アミューズメントスペースで様々なゲームに興じ、コーヒーの香りに包まれた喫茶店で静かな時を過ごす……。
 渚は、夢の住人になったようだった。チームのメンバー複数で、似たような感じで遊んで騒ぐことは数多くあったのに、今日は、全く違う。
 隣に悟がいて、その穏やかな微笑がいつも自分を見ている。見守ってくれている。一緒にいる。ふたりだけでいる。それだけで、楽しくて、ふわふわして、そして……時間を忘れたくなった。
 それなのに、人の意識は不思議で、寂しい。楽しすぎる時間など、望まないのに刹那の風にかえて、簡単に思い出にしてしまう。
 いつのまにか日は暮れて、降りた闇が街のネオンを浮かび上がらせていた。
 ふたりは、そんなネオンの下を行き交う人の群れに乗っている。しかし、繋いでいた手は、まるで夏の陽に溶けてひとつになったかのように離れない。
 脚の向く先も定まらないまま、気がつけば駅まで来ていた。悟と渚の帰る場所は、全く違う方向になる。
 ここで…別れなければならない。
「………」
「………」
 二人に言葉は無かった。脚も、止まったままだった。ただ、繋いだ手のひらから溢れ出す寂しさを、お互いに感じていた。
「渚……」
 悟が、ふいに口を開く。その顔に、いつもの微笑みはない。彼もまた、胸に湧く寂しさを持て余しているのだ。
 そしてそれは、ひとつの決意となって、音を得て零れた。
「帰したくない、よ……」
「っ」
 その意味を理解できないほど渚は子供ではない。むしろ、漁師の大家族という開けっ広げな家庭環境は、早い段階で彼女に様々な性知識を与えていた。なにしろ、兄たちの卑猥な会話はまるごと聞こえていたし、その部屋からエッチな雑誌を探りあてては、読んだ後でからかいの材料にしたものだったから。
 従って渚自身も、そのことを色々と知るに至ったわけだが、今までそれほど関心を示さなかったのは、そんな相手がいなかったからだ。
 だが、違う。今は、違う。
 こんなにもがさつでしおらしさの欠片もない自分を、女として見てくれて、女として欲してくれる存在がいる。
 その事実が、急激に彼女のたおやかさを、花開かせた。
「渚?」
 繋いでいた手を離す。そして、悟の肩に両手をそっと添える。
「………」
 つま先だって、彼の唇に自分の唇を押しつけた。昨日までの自分からは、自分でも想像できなかった自分の姿がそこにあると思う。
「………オレも……今日は……ずっと、悟と……いっしょがいい」
 わずかに離れたその後で、自分を求めてくれた恋しい人の唇に、渚はささやいていた。





 ハイツ大崎、307号室――――。エレナの部屋である。
 そして、試合を終えた今、長見もまたこの部屋の住人となっていた。
 前期の最終戦に勝利し、5試合4勝1敗の成績で勝ち点を“12”に伸ばした城二大は、星海大を抜いて2位となった。これで、トップを走る櫻陽大との差は、わずかに1。総合優勝を目標に据える今、大きな足がかりを作ることができたのである。
 とりあえず、前期の総括と打ち上げは別の日に設けることにして、今日はそれぞれ球場で解散していた。
 試合の緊張感から開放された途端、エレナがとことん痛みを訴える。電車の中でもバスの中でも、空いた席があるというのに彼女は座ろうとしなかった。
 心配した長見は部屋についてすぐ、ユニフォームのままエレナをうつ伏せでベッドに寝かせた。そして、ベルトを外し、ズボンをショーツごと膝の方まで下ろしたのである。
「あらら……」
 お尻は真っ赤になっていた。そして、二つに割れていた。


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