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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-112

「エレナ、体調でも悪いのかしら」
 呟いたのは玲子だ。隣の直樹が、疑問符を貼り付けた表情で、玲子の方を向く。
「なんか、元気がないと思わない?」
 併殺打に倒れてから、ベンチに戻ってくるまでのエレナにはいつもの溢れる笑顔がなかった。チャンスを潰したことを、気に病んでいるのかもしれない。
「しゃあねえよ、次だ次!」
 長見が、そんなエレナに励ましの声を送っている。他のメンバーも、エレナを責めたりはしない。亮が少し、相手の投球について忠告をしているが、それも淡々としたもので、言葉尻に負の感情は少しも孕んでいなかった。
 しかし、エレナの表情がさえない。
「……どうした?」
 さすがに長見が気づき、心配そうな顔で覗き込む。
「あ、SORRY……ぼーっとしてしまって…」
「なんだ、熱でもあるのか?」
 長見がエレナの額に手を宛てる。至って平熱のようだ。
「ほんとに、大丈夫ですから。次は、きっちりがんばります」
 エレナは笑顔を作って見せた。もちろん長見は、それが取り繕ったものであることを見逃しはしない。
「……ま、エレナがそういうんなら」

 ぽこ…

「あ」
 原田の打球が宙を舞った。それはあっさりと捕手のミットへ。結局この回も結果的に3人で終わってしまった。
(なんだよ……らしくねえな)
 正直、エレナのことが心配だ。
「チェンジ!!」
 だが、今は試合に集中しなければならない。
「さ、行こうぜ」
「………YES」
 長見はエレナを促して、ともに外野の守備位置へと向かった。



 バッテリーの勝負といっていいかもしれない。
 阿吽の呼吸というべき息のあった両バッテリーは、投げ込むリズムもテンポ良く、それが引き締まった試合を演出している。
 晶は絶妙なコントロールと伸びのあるストレートで相手にほとんど隙を与えず、渚は時折コントロールを乱し四球を与えることもあったが、カウントを整えてからの“日の出ボール”を要所で決めて、得点を許さない。
 5回を終了して、両チーム得点なし。こうなると、先取点が勝敗の帰趨を握ってくる。
 6回の表、城二大の攻撃。先頭打者は、9番の晶だった。
(そろそろ、なんとかしないとね)
 膠着した試合を動かすには、まず塁に出なければならない。そのためには、あの“日の出ボール”の球筋を見極めることが重要だ。
 横から見るとなんでもないストレートに見えるのだが、いざ打席に入ってみると、向かってくるように浮き上がる。そのため、ボール球だったとしてもつい手が出て、空振りないしはポップフライを打ち上げるという結果になってしまう。
 晶が打席に入った。最初の対決は、セカンドライナーに打ち取られている。
「………」
 だが、当りは悪くなかった。正面に飛んだのは不運だったが、球筋に惑わされることなく芯を食うことはできた。
 好球必打。アンダースローに惑わされていては、いつまでも足がかりは出来ない。
 渚が振りかぶり、放った初球はアウトコースに。


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