『STRIKE!!』(全9話)-102
第6話 「正念場!!」
前期の日程は、早くもあと1試合を残すのみであった。
城南第二大学のこれまでの戦跡は、
第1試合(対櫻陽大学) 3−4 ×(勝ち点0)
第2試合(対仁仙大学) 12−0 ○(勝ち点3)
第3試合(対享和大学) 5−0 ○(勝ち点6)
第4試合(対法泉印大学)16−0 ○(勝ち点9)
と、なっており、現在のところ3位である。
しかし、残念ながら前期の優勝は逃してしまった。なぜなら、先に最終戦で勝利をおさめた櫻陽大学が総合の勝ち点を“13”にまでのばし、城二大が次の試合に勝ったとしても、届かない数字に達したからである。
確かに悔しい思いはあった。だが、総合優勝への道が絶たれたわけではない。
櫻陽大学の勝ち点が“13”であることに着目して欲しい。5試合全てに勝利したのならば、総合の獲得点数は“15”になる。それなのに、2点も足りない。
そう。勝ち点が“1”として計算される引き分け試合が、ひとつあったのだ。
破竹の勢いで連勝を重ねていた櫻陽大学と引き分けたチーム。それが、次の対戦相手・星海大学である。
星海大学の戦跡を、少し見てみよう。
第1試合(対法泉印大学) 6−0 ○(勝ち点3)
第2試合(対享和大学) 2−1 ○(勝ち点6)
第3試合(対仁仙大学) 4−0 ○(勝ち点9)
第4試合(対櫻陽大学) 2−2 △(勝ち点10)
光るのは、何といっても櫻陽大学との引き分け試合だ。そして、城二大に勝利すれば、勝ち点で並んだ櫻陽大学と、前期の優勝をかけたプレーオフに進むことが出来る。
つまり、星海大にとっても城二大との一戦は正念場なのである。
試合の得点経過を見ると、攻撃力の乏しいチームであるとわかる。しかし、あの櫻陽大さえ2失点に抑えるほどの投手力と守備力。決して侮れない。
いや…成績から換算すれば、城二大は追いかける立場なのだ。例え僅差だったとしても、3勝1分の成績を残しているのだから。相手を圧倒し続けたこれまでの3試合は、念頭から外さなければならないだろう。
とにもかくにも、二つのチームにとって、この試合は大きな意味を持つ。
城二大は、総合優勝への足がかりを守るため…。
星海大は、前期優勝へのプレーオフをかけて…。
決戦の週末は、すぐそこまで迫っていた。
「というわけだから、ナシな」
「……YES」
星海大学との一戦を二日後にひかえ、なにやらひと悶着していたのは、長見とエレナだった。
時間は既に0時を越えている。
今現在、チームの置かれている状況のためか、これまで以上に気合の入った練習を遅くまで行っていた。しかも、それが終わったあとに長見はエレナとバッティングセンターでしばらく打ち込んで、10時を廻る頃になってようやく帰宅した。まったく、第1話の頃の彼からは想像もつかない長見の姿だ。
部屋に戻った後、エレナが用意してくれたスタミナ料理を馳走になり、それで腹を満たした後に“誘い”を受けたのだが、とてもそんな気分にはなれなかった。それで、セックスを断る口実として亮から聞いた話をそのまま語ったのである。
エレナも聡明な女性だ。事情をよく飲み込めている。これまでとは違う緊張感がチームの中にあり、それが次の対戦相手の強さを物語っていることもわかっているのだ。
だが、男女の仲はそんな理屈だけでは片付けられない。“やりたいものはやりたい”のである。
「そんな顔すんなよ。その……そんな気がしねえだけだから」
「わかってます……」
長見は苦笑する。いつも無邪気なエレナの顔がこんなに曇るのは、久しぶりのような気がした。