キズ-2
「ねぇ、私の名前知ってるよね?」
「知ってますよ、高見 有栖さんですよね」「だったら、君とかアナタとか言わないで普通に呼んでよ」
「はぁ」
「もう何でそう言うの。まぁ良いや、丁度良いからあそこのお店に入って少しナンパの二人がいなくなるまで時間潰そう」
「それじゃ、僕は帰りますね」
「えー、絶対ダメ、あの二人が見たらまた来ちゃうよ」
「僕にどうしろと?」
「今日の少しの間だけ彼氏役になってくれない?」
そうこれが1番楽な方法なのだ。ナンパの二人だって流石に彼氏がいるのにナンパしには来ないだろう。まぁ村尾君がなってくれるかは微妙何だけどね。 「はぁ〜、まぁしょうがないですね。良いですよ」
盛大な溜め息を吐いたと思ったらこっちは断られると予想をしていたがあっさりとその予想を破った答えが出た。
「良いの、ありがとう♪じゃ、行こ」
私達が入ったのはお客もそんなに入ってない寂れた感じの喫茶店で私はこういった感じは意外と好きだ。淋しいと言うか静かな感じで結構好きだ、私はマスターに珈琲を頼んで村尾君はココアを頼んでいた。
「甘いのが、飲みたいんだ」
「いえ、珈琲は苦手なモノでしてね」
「ふ〜ん、意外だな〜珈琲結構美味しいんだよ」
「お待たせしました」とマスターが珈琲とココアを持って来てくれた。
「「ありがとうございます」」
二人同時に言ってしまった。
「はは、同時でしたね」
「あはは、そうだね」二人して何が楽しいのか笑っていた。
「でも、意外だな。村尾君が笑ってる所も話す所も今日が初めてだよ、ホント意外だなぁ〜」
「僕もまさか余り喋った事の無いクラスメイトから道を歩いてたら彼氏役を頼まれるとは思いませんでしたよ」
「う〜、それは言わないでよ。恥ずかしかったんだから」
(何でそんな風に言うのよ!!)
「でも、ホント話して見ると村尾君って面白いのね」
「ありがとうございます、僕も意外と楽しかったですけどね」
綺麗な笑顔を見せてくれた。ああ、顔が見えないのが残念だ。どんな顔で言ってるのかな?
「ねぇ、村尾君ってどうして顔を髪で隠してるの?」
「……………………」笑っていた顔を消していつもの無表情になってしまった。
「ゴメン、調子にのってた」
「いえ、それは余り喋りたくないんですよ。すみません」
お互いに謝ってしまった。
「さて、そろそろ帰りましょうかね。もう帰らないと遅いですよ」「あ、ホントだ。帰ろっか。」
話題を変えて二人は会計を済ませて、帰路に着いた。
「はぁ、あそこの珈琲美味しかったなぁ」
「ココアも美味しかったですよ」
「そうなんだ、今度来た時は飲んでみようかな。うわ、ホント今は暗くなるの早くなっちゃたな。まぁしょうがないか、それじゃ村尾君また、明日ね」
「ええ、また明日…………っと、ちょっと待ってください。今から帰るんでしたら、送って行きますよ。もう真っ暗ですしね」
「ええ!!良いの?良いよそんな無理しなくても」
結局家まで送ってもらってしまった。
「村尾君、ありがとう。お家の人は怒ったりしないの?こんな遅くに帰って」
「いえ、家には僕一人しかいないんで誰も何も言わないんですよ。それでは、高見さんまた明日学校で」
「…うん、また明日学校でね」
そうして、村尾君は私に言って帰っていった。(家に誰もいない?何でだろう)
これが私に高見 有栖と村尾 詩音の初めての会話と出会いだった。
つづく