紅館の花達〜転生花〜-5
それはゼロの尻尾だった。
『欲しいでしょ? 入れてあげる。 でもご主人たまのはシャナちゃんには駄目。』
尻尾が器用にショーツの布地をずらし、私の蜜を絡ませながら穴にあてがう…
『私は…私は…紅様を…ゼロやめて!!』
グリュッと抵抗をかいくぐりながら異物が侵入してくる。
『ゼロ!!!』
パーーン!!
ひっぱたく炸裂音と共にゼロが床に倒れこむ。
『…スー…』
扉が開いていた…スーが息を切らせながらゼロをにらみつけている。
叩かれた頬に手をあてなが、ゼロが立ち上がる。
『ゼロ!! あなた、自分が何してるか分かってるの!?
…今朝もあれだけ言ったのに!』
スーは激怒の表情のままゼロに詰め寄る。
だが、朝とは違い、ゼロもスーを真っ直ぐと見つめかえす。
『スーさん…叱らないで下さい。
私が悪いのです…私が…』スーにそう言うが、スーは止めない。
『シャナ…さん、あなたは出てって…』
『スー…シャナちゃんに教えないといけないことだったんだよ。』
パシーーン!!
再びビンタが炸裂し、ゼロはベットに倒れこんだ。
『スーさん! お願い! 止めて下さい!』
駆け寄り、スーの手を抑える。
『あなたは出ていきなさい!!』
『行けません!!』
しばらくの間、私とスーさんは睨み合っていた。
しかし。
『良いよ、シャナちゃん。
大丈夫だから。』
ベットに寝転がりながら、ゼロはこちらを見ている。
『でも…』
『大丈夫、大丈夫だからさ♪』
ゼロが笑った。それは初めの時のような子供の笑顔…
『…わかりました…失礼します。』
スーの手を離し、部屋を出て扉を閉める。
『・・・』
私は紅様を…
続く言葉…私に言う資格があるのだろうか?
ゼロの言うとおり、こんなことで他人に体を委ねる私に…資格はあるのだろうか?
『…無いよね…資格なんて…』
『無いわけ無いでしょう。』
声の方を見るとアルネが立っていた。
『アルネさん…! これは… 二人は悪くないです!
騒ぎの原因は私です!』
きっと声が聴こえていたのだろう。
腕を組んで、いつもの無表情で私を見ている。
が、ピクリと眉が動いた。
『何か勘違いしてない?
別に私は誰も処罰しないわよ。
あの二人なら大丈夫。
こっちにいらっしゃい。』はぁ…と急に表紙抜けしてしまった。
『何してるの、こっちよ。』
アルネは執務室へ入っていった。私も続いた。
『で、資格だけどね。
あるわよ、あなたにはある。』
執務室はやはりアルネが使っている性か、非常に綺麗だった。そして、中央にあったテーブルと椅子に座り、向かい合っている。
『でも…私は…』
『ゼロは策士よ、勧誘とか上手いから世間の耐性が無いエルフさんに断り切れるわけないわ。』
私はうつ向いて、自分の足ばかり見つめていた。
『でも…』
『重要なのは何よ?
今でしょう?
あなたは反省した。 それで良いじゃない。
もう二度と紅様以外に体を委ねない。 そう思ったんでしょう?』
一度だけ顔を上げて、アルネを見る。そして頷き、また下を見た。
『…まったく、良い?
あなたは紅様の…ん、なんて言うのかしら…
紅様の愛ってものを少なくとも私以上に受けてるわ。
紅様は私のことを仕方なく抱いてるようなものだもの。』
仕方なく…?
『仕方なく…ですか?』
それはどういう意味だろうか?
『…昔ね、紅様は間違って私を抱いたのよ。
そう、あれは紅様の奥様が亡くなった時ね…』
もしや、あの森の墓場で見た名前…最愛の人が…
『…シャルナ様?』
『知っていたの…?
そうシャルナ様、あなたに良く似たお姿だったわ。
内面はちょっと似てないけど。
シャルナ様が亡くなって、しばらく経ったある夜、一人悪夢にうなされる紅様に処女を、ね。』
自嘲気味に笑いながら話すアルネ。
『あの方、私を抱いたこと覚えてなかったもの。
朝起きて、私と寝たとわかるったら大謝りだったわ。 フフ、後にも先にもあれだけ謝られたのは無いわ。』
辛い話だ…でも、何故アルネはそんな話を私にするのだろう?
『…とりあえず、元気になりなさい。
励まし方とか、わからないけど、元気にね。
あなたが落ち込むと紅様も落ち込むわ…』
それだけ言うと、アルネは立ち上がる。
『一つ聞いて良いかしら?
あなた、なんで紅様が好きなの?』
『え…えと、その…』
そう改めて聞かれると、何故だろう?
気付いた時にはもう好きだった。たった一日、いや一瞬で好きなっていたのかも知れない。
『なんとなく…かしら?
その、理由が思い付かない感じ?』
コクリと頷くと、アルネはクスクスと笑いだした。
『わかったわ…さぁ、そろそろ行きなさい。 もう掃除の時間は終わりだから、帰って夕食…いや、あなた、この館の三階に行きなさい。
紅様が居るから。』
紅様が居る。つまり会いに行けということだ。