Cross Destiny
〜神竜の牙〜A-36
「しっこくの・・・りゅうじん?」
ヴェザードの言葉を聞いてフォルツが反応する。
「そう、フォルツ。お前のことだ・・・そしてその話は今からする。その為にお前をここに呼んだんだ。」
デェルフェムートは静かに語り始めた。
「500年前の戦争のことは知っているな?」
フォルツに尋ねるデェルフェムート。
「神竜・・・大戦」
そしてフォルツはすぐに答えた。
「そうだ。そして世の中のやつらは、神竜を長い戦いの末、英雄二人の活躍で倒したという話しか知らない。」
「というと?」
「実際はそれだけじゃなく歴史の表舞台に出なかった、世の中には知れ渡っていない真実が数多くあるんだ。
まずはそれを順を追って話していこう。」
デェルフェムートは手元にあるグラスに入った水を一気に飲み干した。
「なぜ神竜大戦が始まったかは知っているな?」
「神竜は人間が存在する前からこの世界を支配していた。
そして人間がこの地に生まれてから神竜は人間を支配し続けた。
何千、何万年も。
やがて数を増やし、知恵を付けた人間が、神竜の不当な支配から逃れるために反旗を翻した。」
フォルツは、昔 本で得た知識を一気に語った。
「そう、そしてここからが世の中には知れ渡らなかった歴史の事実だ。」
デェルフェムートのその言葉にアルス、フォルツ、そしてルナも真剣な表情になる。
「剣聖アルス、大魔導士フォルツ率いる革命軍、その数およそ40万。
そして神竜は当然一頭だった。
反旗を翻した人間達と神竜との戦いはまず数カ月。
ある時は迫兵戦で、ある時は弓や銃で、ある時は呪文、ある時は罠で。
剣聖アルスと大魔導士フォルツ率いる革命軍は数カ月に渡り戦い続けたが神竜に傷を負わすことすらできなかった。
その間にも革命軍は10万に減っていた。
神竜の絶大な力を前に人間は無力すぎた」
「神竜の絶大な・・・力」
ルナがその言葉に微かに反応した。
「そして神竜には更にある力があった
それは創造の力。
そしてそれは自分の力を削るというリスクを持っていた。
しかし神竜は数で勝る人間に対抗するために力を削りあるものを創ったんだ。」
「あるもの?」
「神竜が創ったものそれは人間だ。」
「待ってくださいよ、神竜には傷を負わせることすらできなかったんでしょ?なんで自分の力を削ってまで創造の力を使ったんだ?」
フォルツは話の途中で疑問を投げ掛ける。
「早まるんじゃねえよ、順を追って話すって言ったろが!」
話の腰を折ったフォルツに怒声を飛ばすデェルフェムート。
「えーとどこまで話したっけ?」
「神竜が人間を創造したという所までです。」
「ああ、そうだそうだ」
デェルフェムートはヴェザードの助言で話を思い出す。
「そして神竜は人間を焼き付くす存在として真っ赤な髪と、真っ赤な瞳の人間、竜人を創った。
その数はたった2000だった。
だがその赤い瞳が神竜と同じ銀色の瞳に変わった時、驚異的な力を発し、並の人間では相手にならなかったという。
しかし神竜の創造の力は完璧すぎた。
神竜はその竜人達に人の感情までも与えてしまった。
神竜が創った竜人の半分が、神竜の残虐さに、同じ人間を殺すことに絶望をし、革命軍側に付いてしまったのだ。
その後神竜は自分側に残った半分の竜人の忠誠心に敬意を称し、自らの闇の力を与えた。
そして半分の竜人は黒き髪、黒き瞳の竜人へと姿を変えた。
後に黒き光呪文・・・
"闇呪文"を使う神竜側の竜人を
"漆黒の竜人"
革命軍側についた竜人を
"真紅の竜人"
と呼ぶようになった。
」
「漆黒の竜人・・・俺が・・・それだっていうのか?」
デェルフェムートの話で自分のことを知ったフォルツは困惑気味で一点を見つめる。