Cross Destiny
〜神竜の牙〜A-31
そして半日後、五人はついにシーラ城の門前までたどり着いた。
そこの門には城を警護するための守備兵が何人もいて、アルス達を見て警戒した。
「何の用だ?」
アルス達に剣を向ける守備兵達。
「ちょっと待てって!ほらこの人!」
フォルツがファラを指差す。
「こ、この方は!ファラ様!!」
ファラを見て守備兵達が驚愕した。
「貴様らがファラ様を誘拐したのか?」
すると守備兵達はアルス達に向けて更に剣を突き立てた。
どうやらファラがいなくなったのは誘拐されて、しかもアルス達がその犯人だと思われているらしい。
その時。
「止めなさい!無礼ですよ!!この方達は私をここまで護衛してくれたのです。」
ファラがアルス達を弁明してくれた。
その後 議会や城内にもファラの安全は確認された。
そしてファラがアルス達に別れの挨拶をする。
「私はずっと父や兄に劣る自分が国民に恨まれてると思ってた。そして自暴自棄になってた。
もちろんそう思ってる人もたくさんいると思う。
でも私を信じてくれる人がたった一人でもいれば救われるんだということが解った。」
「・・・ファラ様」
「私はこれからやれることをやろうと思う。兄がやりかけた改革を出来るだけやってみようと」
ファラは終始明るい表情で言う。この旅を経て迷いが晴れたのだろう。
「おう、頑張れよ」
「わがままも程々にな。」
「じゃあな」
「ありがとう、アルス、ヴェイル、ルナ。
ああ、あとフォルツもね」
「俺だけついでかよ!」
「そうだ報酬忘れてたわ、はいこのネックレス。売れば2000Gにはなるわ」
ファラは首にかけているネックレスをアルス達に渡す。
「に、にに2000G!!」
予想外の利益にアルス達は歓喜した。
【この後、ファラが手掛けた 浮浪者を労働力として育成する浮浪育成礼や飢饉に備えて各地に巨大な畑を設置することで飢饉に備えるだけでなく仕事を国民に与えるなどの数々の政策を行いシーラ王国は少しずつ持ち直していくことになる】
〈六 竜人〉
ファラをシーラ城まで護送してから二日後。
アルス達四人はシーラ城から北の村に歩いていた。
「はー!2000Gだぜ2000G!!これでしばらく安泰だな」
ファラから報酬として高価なネックレスをもらったフォルツはご機嫌だった。
「お前の言う村はまだなのか?」
アルスがヴェイルに尋ねる。
「うーん。もう少しだと思うんだが。」
《 二日前
「さあて依頼もこなしたし次はどっちに向かうか?」
「あのよ・・・実は寄ってもらいたい村があるんだ」
ヴェイルが三人に相談を持ち掛けた。
「寄ってもらいたい村?何か用でもあるのか?」
突然寄りたい場所があると言い出したヴェイルをアルス達は少し不信に思った。
「実はその村にある遺跡に前々から興味があってよ。シーラに来たら調査したいと思ってたんだよ」
「遺跡の調査はあらかた終わったんじゃなかったのか?」
「ああ、あらかた終わったけど全て終わった訳じゃねえ。シーラに来たら絶対寄りたいと思ってたんだよ。」
「ああ、別に構わないが」
何やら必死なヴェイルに押されて、また特に目的も無かったので三人は納得した。
そしてシーラ城から真北にあるというその村にアルス達は向かうことにした。》
「そういや何て村なんだそこ?」
「あー確かレフェン村ってったかな。あ、噂をすれば見えて来たぜ!」
前方数キロ程にあるレフェンの村は小さく、遺跡があるようには見えなかっが三人は何も言わずヴェイルに着いていく。
そしてルナだけはヴェイルの様子がいつもと違うことに気付いていた。
しかし気のせい程度にしか感じていなかったのであえて口に出すことはしなかった。
そしてレフェンの村に辿り着くと三人は異変に気付く。
全ての民家には草が這い、窓は割れていて、すぐに 大分前に廃れた村だということが解った。
また、遺跡などどこにも見当たらなかった。
すると一番の異変にアルスとフォルツが気付く。
誰も住んでいないはずの村に何人もの人の気配を感じた。
そして村の中央まで進んだ時だった。