Cross Destiny
〜神竜の牙〜A-12
「だが、もうその心配もいらないようだ。
彼女は不思議な力を持っているが、それ以外は普通の人間と同じだった。君達と共に立派に旅をしてきたんだもう心配はいらないね。」
「・・・・・」
ルナは黙ったまま頷いた。
「本当に申し訳なかった。」
突然アレスターがルナに深々と頭を下げた。
「他の人々を守るためとは言え、私は君の人生を奪う所だった!
だが今から君は自由だ。」
「頭を上げて下さい」
頭を下げる国王にルナは戸惑いながら言う。
「いや、いいんだ。
それとフォルツ君、ホーリーに力を貸してくれないか、という話。それを呑んでくれれば君の事について全て教える。
返事は何ヶ月先でも構わない。」
フォルツはそれを聞き、しばらく黙った後
「しばらく考えさせてください。」
とだけ言った。
「そうだ、レーヴェスが君の連れと戦っているんだろ?すぐに行ってあげなさい。黄泉羽は私の部下ではない、依頼した内容以外は私の命令は聞き入れない。
それに私はすぐに城に戻らなくてはならない、いつまでも替え玉に代わりを勤めさせておく訳にはいかないしな」
アレスターの言葉を聞き、フォルツはルナを連れて急いでアルス達の元に向かった。
フォルツとルナが階段を降りると既に勝負は決した様で、アルスとヴェイルだけがそこに立っていた。
「アルス、レーヴェスはどうしたんだ?」
フォルツがアルスに尋ねるとアルスがフォルツの方を振返り、ルナがいることに気付いた。
「ルナ!!」
アルスがルナの元に駆け寄る。
「ごめんなさい。」
ルナは俯きながら小さな声で言った。
「私はまた・・・迷惑を」
「くだらないことを言うな、迷惑をかけない人間なんていない。
フォルツなんて二日に一回は俺に迷惑をかける」
アルスは相変わらず下手な慰めをした。
「ありがとう・・・・・私はきっと・・・強くなるから」
ルナは涙ぐみながら言った。
その言葉を聞いてフォルツとヴェイルは微笑んだ。
そしてルナがヴェイルの存在に気付く。
「あの・・・この方は?」ルナはアルスに尋ねた
「ああ、こいつはヴェイル。黄泉羽のレーヴェスの兄弟子だそうだ。レーヴェスに説教たれるために着いてきた」
「てめえ!なんちゅう聞こえの悪い言い方しやがる!!」
「んで?レーヴェスは?」
フォルツは再び尋ねる。
そしてアルスは経緯を全て話した。
《ヴェイルとレーヴェスの戦いが終わった。
そして急所を外されたとは言え、ヴェイルの奥義を受けたレーヴェスはしばらく立ち上がれなかった。しかし数分後レーヴェスは自力で立ち上がる。
「レーヴェス・・・・・行くのか?」
「ああ」
「黄泉羽に・・・・戻るつもりか?」
「・・・・・いや、俺は黄泉羽を抜ける。」
「え?」
「今は何にも囚われずに 自分の目で、足で、歩きたい。
今はそう思う」
レーヴェスは気のせいか一瞬笑顔を見せた気がした。
「・・・・・そうか」
ヴェイルは少しだけ嬉しそうに言った。
そしてレーヴェスはアルスを見る。
「じゃあ俺は行くぞ。」
しかし何も言わずにレーヴェスは立ち去ろうとした。
アルスも何も言わなかった。