記憶のきみ0-3
『同じクラスなのか』
「うん」
『名前』
「え?」
『なんて名前だ?』
彼は掴んだ手を離すと、ため息をつきながら言った。
「なっ…名前を聞くときはまず自分から名乗りなさいよ!」
あー…なに言ってるの…あたし…
彼は驚いたように目を見開いた。
『くく……おもしれぇなお前』
彼は突然笑いだした。
なんなの…やっぱりこいつ…わけわからない。
『常葉瞬だ』
でも、やっぱり……
「佐藤由貴よ。よろしく」
かっこいい……
こうして、あたしは瞬と知り合うことができた。
数日も経つと、瞬はあたしを気に入ってくれたのか、かなり心を開いてくれるようになった。
あたしは女と連むのは好きではなかったし、瞬も割と一匹狼だったから、かなりウマがあった。
『由貴、授業サボろうぜ』
「なにいってるのよ」
こんなことは、もう日常茶飯事だ。
『先に行ってるぞ』
瞬はあたしの言うことも聞かずにズカズカと教室を出て行く。
なんて自由奔放なのだろう。
「……もう!試験前に勉強おしえてって泣きついても知らないんだからね!」
あたしは声を荒げながら瞬を追いかけた。
もちろん怒ったのは演技で、内心ではすごく笑っていた。
瞬は冷たく重い、鉄の扉を開いた。
「………ここはいつ来てもすごいわね」
そこには素晴らしい屋上の景色が広がっていた。
眩しい太陽に空の青色や桜の桃色が映える。
二人はしばらくその景色に見惚れていた。
やがて、瞬が口を開いた。
『………由貴』
「……え?」
瞬は少し考えたあと、苦笑いしてこう言った。
『………なんでもねーや』
「ちょっと!なによ!」
『………』
「………ばか」
『痛ぇ』
「男でしょ!」
『お前のグーもな』
バキッ
屋上の景色は常に変わりゆく。
けれど、あたしの気持ちはこれからも変わらないと思う。
今は友達でも…
彼のそばに…
瞬のそばにいたいの。