ケイと圭介の事情(リレー完全編集版)-18
「それにしても遅いなぁ…」
香織は「うーん!」と唸りながら伸びをして周りを見渡していた。
それらしい人は来ていない。
あとのメンバー誰だったかな? 話し半分で聞いてただけだったからなぁ…。
俺扮するケイは、入来にさり気なく聞いてみた。
「あのさ…来るのって後何人?」
「二人だよ。超イケ面と小さいバスケ少年……って、噂をすればってやつ? 香織、あれ西家と東谷じゃない」
未歩の指差した方に俺達は一斉に視線を集めた。
「悪い、遅れた」
爽やかな笑顔で現われたのは『西家 慎也』で自慢のサラサラヘアーを揺らして優雅に登場した。
「こいつが服決まらねぇっつってグズグズしてっからさぁ…」
慎也の後ろからひょっこり現われたのは『東谷竜二』で身長は女の未歩や香織よりも小さいがバスケ部のエースである。
そういやこいつらだったな…。
俺は見慣れた顔の二人に、一応はじめましてと愛想良く挨拶をかました。
「先日雑誌を拝見しました…本当に完璧な人には言葉も出ません。今日はよろしくお願いします」
そう言うと、慎也はケイの手を取り英国紳士のようにお辞儀をした。
幸司に引き続きやっかいな奴が来た…とケイは顔を引きつらせた。
「さっ!! 全員集合したトコで、ダッシュでスタジオ行って即効曲決めと練習するわよ!! こっから先は真剣勝負!! 負けは許さないからみんな真剣にやんのよ!!」
俺を除いて、五人は円陣を組みだした。趣味も性格も全然違う奴らだが学園祭のことになると異常なほどの協調性を見せた。
「気合い入れるわよ!? えい!! えい!!」
「「学食のタダけーーん!!!!」」
五人は一斉に握りこぶしを天に突き上げた。
いや…語呂悪いから……。
「お、ここだここ!!」
しばらく歩くとそれらしき建物に到着した。幸司が先頭をきってスタジオに入っていく。
スタジオはどうやら建物の地下にあるみたいで、幸司は先に階段を下りていった。
階段を下りる時、壁に目をやるとお約束というべきかバンドのメンバー募集やライブの告知ポスターがところ狭しといった感じで張ってあった。
俺はスタジオを利用するのは初めてだけど雰囲気はこんなもんなのかなぁ? とか思いながらみんなの後を着いて行った。
スタジオのエントランスに入り幸司が受付をしてる間にケイはみんなと雑談をしながら周りを見渡していると、自分と年齢が変わらないと思われるグループがスタジオの一室から出てきた。
普段ならさして気に留めることはなかったのだろうけど、ケイはそのグループの中にいる一人の女の子に違和感を感じたのだった。
そして、その違和感を感じた女の子がケイの視線に気付き、文字通りケイのところへすっ飛んできたのだ。
「あーーっ! ケイだぁ! なんでこんなところにケイがいるの!?」
その女の子はケイの周りをぐるぐる回りながら嬉しそうに見ると飛び切りの笑顔でケイの手を握りブンブンと握手をしてきた。
「えっ!? な、何!?」
俺はいきなり握手をされ驚きを隠せないでいたが、彼女の足元を見た瞬間に更なる驚きが俺を襲ったのだ。
なんと、彼女は微妙に浮いてるではないかっ!?
動揺を隠し切れない俺をよそに彼女は自分の彼氏らしき人物を呼んだ。