Cross Destiny
〜神竜の牙〜@-27
《「やはりな、技が荒い。」
「斬影閃・狼牙!!」
「さあ、死の時間だ」》
(くっ、奴のあの技。見切ることができなかった。)
そしてアルスは何度も何度もレーヴェスの槍術を頭で思いだし、受けるイメージを描く。
それから数時間アルスはイメージトレーニングをし続けた。
するとアルスは人の気配を感じた。
アルスが振り返るとルナが自分の元に歩いてきた。
「ルナ!どうしてここが?」
アルスは剣を納めて尋ねた。
「フォルツに聞きました。」
ルナが悲しげな表情で答える。
「どうした?」
それを見てアルスが更に尋ねる。
「私のせいであなたが傷ついてしまったから。」
ルナは負い目を感じていた。
自分が黄泉羽に狙われているせいでアルスが傷ついたと。
「勘違いするな、俺は以前から黄泉羽と手合わせしたいと思っていた。
お前がいなくてもいずれ戦っていたはずだ。」
無愛想なその言葉もアルスなりの精一杯の慰めだった。
そしてルナにはそれが解っていかるたようで、少しだけ表情を明るくする。
「フォルツはどうした?」
「フォルツは調達する物があると言って町で買物をしています。」
「調達する物?
全くあいつは。」
アルスはため息をつく。
「いつ黄泉羽が襲ってくるか解らない。
ルナ、お前はできるだけ一人にならない方がいい。」
「はい」
ルナは頷いた。
そしてその後アルスとルナはフォレスの町に戻る。
すると町の入口でフォルツがでかい荷物をしょって待っていた。
「なんだそれは?」
アルスがフォルツの巨大な荷物を見て尋ねる。
「ジャーン」
フォルツが荷物を広げるとそれは折りたたみ式のテントだった。
「それどうするんだ?」
「黄泉羽を迎え討つんだろ?じゃあいつまでも町長の家にいたら迷惑かけちゃうだろ?」
「お前にしちゃいい判断だな」
「お前にしちゃは余計だ。お前にしちゃは」
「で。これどこに張るんだ?」
「もちろん黄泉羽と戦ったとこの荒野だ。」
フォルツは黄泉羽と刃を交えた場所で堂々とテントを張って待つと言い出した。
アルスは最初それをきいて「正気か?」と思ったが 黄泉羽を恐れていないというハッタリには使えると考えた。
そしてアルス達は再び荒野に向かう。
そこに着くと三人はテントを広げ、張り始めた。そのテントはやはり思ったより巨大で、大の男5人は裕に入れる程だ。
アルスとフォルツは女性と同じ空間で寝るのには遠慮があったが、そうも言ってられないとすぐさま寝る。
一方ルナは気にする様子も見られなかった。
翌朝フォルツが目覚めると脇にはアルスがいなかった。
そして外に出てみると剣を振るっているアルスがいる。
「よう、修業か?」
一心不乱に剣を振るうアルスにフォルツは話し掛けた。
「奴のあの槍術。
あれを防がないと勝機は無いからな。」
「んで?それで防げるのか?」
フォルツが、一心不乱に剣を降り続けているだけのアルスに尋ねた。
「仕方無いだろ!奴はいないんだ。奴のイメージを思い描いて剣を振り続けるしかない。」
アルスは再び剣を振り始める。
フォルツは気付いていた。
アルスが剣を振るたびに響く音が 以前よりも鋭くなっていることに。
イメージトレーニングのおかげで?
否、恐らく初めて敗北を知ったことが原因なのだろう。