Cross Destiny
〜神竜の牙〜@-19
「な・・・んだこれは!?」
「わからない。だけど体が動かない!」
アルスとフォルツはその光によって動きが止められてしまっていた。
同時に二人は体に流れる魔力も感じなかった。
更にトロルもまた二人と同様のことが起きていた。
数秒後、ルナがその場に倒れ込む。
それと同時にルナの体の輝きは収まり、アルスとフォルツ、そしてトロルを包み込む光は消えていった。
「今のは一体?」
フォルツが口をぽっかり空けながら言った。
「考えるのはこいつを倒してからだ。」
アルスは再び剣を構える。
「んじゃあ とっとと片付けるか」
フォルツも杖を両手で構えた。
「フリーズスティング!!」
そして氷の上位呪文、フリーズスティングを唱えた。
大地から巨大な氷柱が十本近く現れる。
そして数本の氷柱がトロルの足から腹部まで突き刺さる。
「グアアア」
巨大な悲鳴と共にトロルは身動きがとれなくなり瀕死の状態になった。
「ハウリングセイヴ!!」
【ハウリングセイヴは剣にまとわせた魔力を高速で振動させて対象を斬るアルスの技である】
アルスはハウリングセイヴをトロルに向けて放つ。
"ザンッ"
「グアアアア!!」
その技を受けたトロルは巨大な氷柱ごと両断された。
「いい所だけ持ってきやがって」
フォルツが人差し指でアルスをつつく。
「そんなことよりルナは」
アルスがルナの元に向かう。
どうやら気絶しているだけのようだ。
「良かった。」
フォルツがほっとした様子で言う。
とりあえず二人はフランの町に戻り、ルナを休ませることにした。
ルナを背負ってきたアルスはルナを町の宿屋のベットに寝かせる。
眠っているルナの脇でアルスとフォルツは先程の出来事について話していた。
「さっきのは一体?何かの呪文なのか?」
アルスが尋ねる。
「いや、違う。あんな呪文はない。もしかしたらあの子の持つ特別な力なんだろうか。」
指を顎につけながらフォルツが言った。
「閉じ込められてたことや、追われていたこと。あの力が関係しているのか。」
「多分」
終始困惑気味の二人だったが少しづつルナのことについて理解し始めた。あの力の正体を除いて。
「う・・・ん」
ルナが目覚めた。まぶしそうに目元に手をかざす。
「大丈夫か?」
「おはよう」
二人の問い掛けにルナはハッとする。
「私は・・・・一体?」
先程のことを覚えていないようだ。
「お前はトロルに男が殺される所を見て気絶したんだ。」
アルスはルナの不思議な力のことは言わなかった。
「ショックだったんだろ?目の前で人が死ぬのを見るのも初めてなのか?」
フォルツが尋ねるとルナは黙って頷いた。
「私、あの人のことを頼まれたのに・・・・・何もできませんでした。」
落ち込んだ様子でルナがいう。