Cross Destiny
〜神竜の牙〜@-18
「トロルの皮膚は堅い。あーんなハンパな攻撃じゃ倒せるはずないだろ。」
フォルツは肩を上げながら言った。
「ルナ、お前はその男を頼む」
アルスがそう指示するとルナはうなずきその男の元に駆け寄る。
そして回復呪文を使った。
「・・・ケア・・ウォームス」
ルナは回復の下位呪文を唱えた。覚えたての呪文の名前なので少し戸惑った様子で唱えた。
回復呪文で次第に男の外傷は消えていったがまだ目覚める様子はない。
「くらえ!」
アルスはトロルの胸に向けて突きを繰り出した。
「ちっ」
しかしその堅い皮膚と筋肉のせいであまり突き刺さらない。
「俺に任せろ」
アルスに退がらせるとフォルツが杖を構える。
「ファイアーシェル!!」
フォルツが炎の下位呪文ファイアーシェルを唱え、杖から火球が飛び、トロルに当たる。
「グアアア」
悲鳴をあげるトロルだがあまり効果は無いらしくケロっとした様子だ。
「な、タフな野郎だな!」
フォルツがたじろぐ。
そしてトロルが拳を振り上げるとアルスとフォルツに向かって振り下ろした。
"ドーーン"
という もの凄い音と地響きと共にトロルの拳が大地に減り込む。
「ぅ・・・・ん」
その音と地響きで気絶していた男が目覚める。
そしてスッと立ち上がるとアルスとフォルツを見て、走り出す。
「あ、危険です」
と言うルナを無視しアルスとフォルツの元に向かうと二人を腕で押しのけた。
「てめえら人の獲物盗るんじゃねえ!!」
男は二人にそう言い放ち、再び弓を構える。
「死ね死ね死ねえ!!」
男は連続で弓を放つと、トロルの目に一発、頭に5発突き刺さった。
「はあはあ、どうだ?」
「グオオオ」
「馬鹿野郎逃げろ!」
フォルツは叫ぶ。
男の矢はトロルを倒すには至らず、トロルは怒り狂った様子で男に右の拳を繰り出す。
「うおっ」
男はなんとかトロルの拳を避けるが、その直後トロルは左の拳を繰り出した、そして男はトロルの拳に握られてしまった。
「グオオオ」
更にトロルは男を地面へと叩き付ける。
「うああああ」
"ダーン"
という音と共に地面に叩きつけられた男はそのまま死に絶えた。
「半端な力で前に出るからだ」
アルスは言った。
「あれは欲に目がくらんだあの男が悪い、お前はやれることはやった」
人を慰めるのが苦手なアルスだったが、なんとか元気付けようとした。
ルナもそれを感じたのか表情に少しだけ明るさが戻った。
あの力は何だったのか?
アルスとフォルツは、今はいくら考えても解らない問いをいつまでも自分に投げ掛けていた。
「いや・・・・いやあああ」
魔物に男が殺される光景を見ていたルナが突如叫びを上げる。
するとルナの体が金色に光輝き、その光がトロルを包み込む。
そして同時にアルスとフォルツも光に包み込まれた。