Cross Destiny
〜神竜の牙〜@-11
〈二章 光の少女〉
それから数日、アルスとフォルツは川辺の道を歩いていた。いくら進んでも町も村も見えてこない。ほとんど変わり映えのしない道を。
道の横を流れる川は透き通っており時折 魚が跳ねる。
おかげで水と食料には困ることがないものの、フォルツはいいかげんうんざりした様子だった。
「おーい、まだ何も見えてこないのかよ?もーう限界だ!」
フォルツはその場に倒れ込む。
「おい、文句言うな!しかたないだろ道なんて知らないんだ、適当に進んでるだけなんだからな。それに川沿いの道を進んでればいつか村か町にたどり着く」
アルスが倒れ込むフォルツの腕を引っ張る。
「もうダメだ、腹減ったよー、眠いよー、疲れたよー」
フォルツはぐったりした様子で言う。
「はあ、全く。しかたない、そろそろ休むとするか」
アルスは呆れ顔をする。
「よーし、そうと決まれば魚釣りだ」
フォルツは急に元気になる。
「元気が有り余ってるな、やっぱり進むか?」
「あー、もう疲労困憊で限界だけど親友のために魚を釣らなくては。」
またフォルツがぐったりした様子で言う。
「相変わらず調子の良いやつだな」
フォルツは魚釣りに最適な木を森から見つけてくると腰にぶら下げてある袋から糸と針を取り出しそれにくくり付ける。
そしてそれに取って置いたパンのかけらを取り付ける。
フォルツはただ単に食事のためだけに釣り道具を備えているのでは無く、趣味でも釣りが好きだった。そのため手慣れた様子で準備が進む。
そして準備が終了すると川辺に座込み釣り糸を垂らす。
アルスもその隣に座り釣りの様子を見守る。
「はー、癒されるぜ」
フォルツは恍惚の表情をする。
「なんて地味な趣味だ」
アルスはぼそっと悪態をいたがフォルツは釣りに夢中で聞いてはいなかった。
それから一時間後、隣でうとうとするアルスをよそにフォルツは3匹の魚を釣り上げていた。
「なあ、こうしてると思い出さないか?」
フォルツはうたた寝をするアルスに話し掛ける。
「何がだ?」
フォルツの声で目を覚ましたアルスが尋ねる。
「ほら昔良く森に行っては二人で修行してたじゃん。
んで対決した後は晩飯の調達。オレが魚を釣って、お前が動物を狩ってきてたじゃん」
「ああ、そういえばそうだったな。」
「お前と何回戦ったっけか?」
「さあな、数え切れないくらい。
他に俺と対等に戦えるやつなんていなかったしな」
「お前は小さい頃から剣に夢中だったよな?
俺なんて剣はからっきしなのにお前が無理矢理剣術を押し付けてくるから大変だったぞ」
「そういえばそんなこともあったな。それで俺は 『こいつはダメだ』 って思ったけど後に呪文の才に目覚めたんだったな」
「ああ、んでお前は剣聖アルスの名を。
俺は大魔導士フォルツから名をもらったんだ。」
「そしていつか胸張ってその名を名乗れるようにって修行しまくったんだよな?」
二人は昔を思いだし懐かしむ。