『子羊の悩ましい日々 〜初めての朝〜』-1
チュンチュンチュン……
小鳥たちの囀りと共に、昇り出した太陽の日差しが徐々に室内にのびてくる。顔のあたりまで日がのびてきたところで、ロイは「ううん……」と小さく唸りながら目をうっすらと開ける。
昨日まで暮らしていた4人部屋の修道院とはまるで違う、ちょっとした広さの個室の中央には大きなベットの上で身を起こす。小柄なロイはベッドの面積の半分にも満たない。周囲を寝ぼけた目で見ること数秒、左を向いたところでソフィア司祭長と目が合う。
「#◎&&%▲$&!!??」
声にならない悲鳴を上げて文字通り飛び上がり、そのまま慌てて後ろに下がろうとする。
「あ……」
ソフィアが止めようとしたときには時すでに遅く、ロイはそのままベッドから盛大に滑り落ちる。
「ふぎゃっ!?」
「あらあら……」
「あいたたた……」
少し涙目になってぶつけた頭をおさえていると、ソフィアが側に寄ってきて優しくぶつけた箇所を撫でる。
「あ、ありがとうございます、司祭長……」
「うふふ、その前に挨拶でしょ?」
「あ、はい、おはようございます、ソフィア司祭長」
「はい、おはようございます、ロイ司祭」
ロイは照れ臭そうに目を逸らすが、自分を照らす陽の光に気づいて青ざめる。
「も、申し訳ありません! こんなに寝過ごしてしまって……!」
彼ら聖職者の朝は早い。非番でない日は、日が昇る前に起きて朝の礼拝を済ませた後、それぞれの勤めに取り掛かるのが常だ。新参者のロイは、本来なら誰よりも率先して早起きをし、神殿の清掃から取り掛かるべきであるのだ。
「いえ、気にしなくても結構ですよ。子羊は体力の消耗が激しいですから、例外的に神殿の日常の勤めからは外されていますので」
「あ……」
子羊という言葉に、ロイは昨日起こった出来事を思い出した。あの出来事が夢であったらいいと寝る前に思ったものだが、現実は甘いものではないらしい。
「やっぱり夢じゃなかったんですね……」
「昨日はさすがに疲れていたみたいなので今後のことは説明しませんでしたが、本日より早速勤めがありますので、これより説明いたしますね」
「何から何まで、お手を煩わせて申し訳ありません」
「いえいえ」
「それじゃまず着替えないと……」
ロイは腰掛けていたベッドから立ち上がると、パジャマのボタンに手をかける。
「…………」
じー
「……う……」
「…………」
じーー
「…………あの…………」
「……何でしょう?」
「そんなにじっと見られても、あの、僕、着替えたいんですが……」
「ええ、私にかまわず、どうぞ着替えて下さい」
「あの……見られているとちょっと……」
「私のことなら気になさらないで下さい」
「でも……あの……」
顔を赤くして困ったような表情を浮かべるロイ。その様子を見ていたソフィアは少しいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「仕方ありませんね。それでは、私が……」
「え?」
「えい♪」
「ええ!?」
あろうことか、ソフィアはロイのズボンを下着ごとずり下ろした。当然のごとく、朝の生理現象で立ち上がっているそれが露になる。
「ロイくん、朝からエッチなんだー」
さっきまでの司祭長としての言葉遣いをやめて、ソフィアは楽しそうな声を出す。目はかすかににんまりとロイを見ている。
「きゃあああああああ!!?」
男とはとても思えない悲鳴をあげるロイだが、ロイの部屋は神殿のかなり隅の方に位置しているので、この時間では誰にも聞かれない。
「ロイくんってば、女の子みたい……」
「あの、あの、あの、……って、あわわわ!?」
ズボンと下着がずり下ろされたままの状態で動こうとしたロイは、そのまま足がもつれてベットに仰向けで倒れる。