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ロッカーの中の秘密の恋
【教師 官能小説】

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関係は化学反応をおこす。-1

「くだらない。なんてくだらない。」
そう彼はつぶやいて、汚い白衣の袖でわしわしと目をこする。今月号の某ケミ雑誌を片手に研究室の埃っぽいソファーでコーヒーをすすっている。
「にゃんこ、この論文読んだ?今月号に載ってた佐々木教授の・・・。」
「あぁ。それ。うん、読みました。」
「あの人馬鹿なんじゃないのか。こんな見当違いを堂々と書きなぐって恥知らずな。」
また始まった、試験管の山を部屋の隅のシンクで洗いながらそう思った。別に私は佐々木教授がバカだとも恥知らずとも思わない。ただ、この若いながらヨレヨレの我が教授は大御所に煙たがられているせいかこういった年寄りの書いた論文を素直に好しとは言わない。
「こんな偉そうに発表してるけどこんなもんなんの役にもたたない。大体データの取り方からして、感心しないよ。おまえ、アレだ、こりゃ、年寄りの昼寝でみた夢かなんかだな。」
佐々木教授の論文は読んだ。別にどうでも良いような内容だった。何が目新しいのでもなく私の興味は特別そそらなかった。それにしたって、この人のこういう子供っぽいところにはほとほと呆れる。
「言いすぎです。」
ぴしゃりと言うとふん、と鼻をならしてとりあえず黙る。
「にゃんこは、あれだ。ツンデレってやつだ。」
そんな言葉どこで覚えてきたんだか。私は黙々と作業を続ける。
「普段はしれっとした顔で試験管なんか洗ってる。」
もうじき他の学生が戻ってくる。それまでにこの山を片付けて置かないと。
「そんなの学部の奴らにやらせればいいでしょ。」
彼は私の背後からコーヒーカップをシンクに置く。実際そうなんだけど、私がやったほうが早いから。それに、他の学生が買い出しにいっている今なら二人でここに残れると思ったから。二人になりたかったのだ、なんとなく。だって、始終研究室にいてもめったに二人きりになんかならないし。その割には私は無口だけど。
「にゃんこ。」
彼は私のすぐ真後ろにある実験テーブルに腰を引っ掛けている。気配を背中で感じるけれど黙って単調な作業を続けていた。後ろから彼の足が私の足をトントンと突つく。
「なぁ、なぁ。」
「なんですか。」
彼の両足にきっちり絡みとられているけれど、強情に試験管を洗い続ける。
「こっち向いて。」
じゃぶじゃぶと水音がやけに耳に響いて、動揺している、と思った。きゅっと蛇口を閉めてシンクを背に振り返った。思ったとおり彼は台に小さく腰をかけてこっちをじっと見ている。今日も髪はもさもさ。寝癖が夕方の今でも直っていないし、ひげも剃っていない。あぁ、薄汚れた男。
「にゃんこってツンデレ?」
そこにご執心。
「知らない。」
今、自分はどんな顔をしているんだろうと思った。少し顔が熱い。
「そういうのさ、女ゴコロっていうのかな。分からないよ。僕のこと好きって言わなかった、この間?」
一気にカッと火照るのが分かった。頭から離れない出来事。なんだかもつれ込むような情事の後に私は、好きだ、と漏らした。だけど、その後何があるわけでもない。
「言いましたけど。」
手を引っ張って引き寄せられる。勝手な男だなぁ、と思う。私の気持ちなんかとっくに分かっているくせに。私はただぼんやりと不安なのだ。不安を具体的に口に出すと益々はっきりしそうで嫌だから言わない。だけど私たちは遠慮のない気持ちを言えるフェアな関係ではないのだ。それは何も教授と学生だからというだけの理由からではない。


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