あたしにとってのふたり-4
「なぁ」
「ん?」
「突然だけどさぁ、最近俺のこと名前で呼ばなくなったよなぁ」
「そーいえばそーだね」
「なんか思い出すなぁ。ずっと前はそうだったよなぁ。名前で呼んでくる時は甘えてくる時くらいで。」
「誰が甘えてくるのよ!?」
「お前だよ。びーかっぷ。」
「なっ!! そういうあんたもあたしを名前で呼ばないじゃない!」
「呼んでるだろー? びーかっぷ。」
「それは名前でもなんでもない!」
━━シュッ!
「おぉっと! その攻撃は効かーーん!」
━━ゲシッ!
「ぐあぁ」
あたしの痛烈なキックが炸裂する。
「決まった〜〜! 黄金の左足〜〜!」
「お前いま蹴ったの右足だろうが」
「言ってみたかったのよ。」
「ぷっ、あははは」
「ふふっ、あはは」
‥‥幸せ。
ずっとこうやってバカやっていれたらなって思う。
家が見えてきた。
あたしには1コ下の妹がいる。
料理上手でしっかり者で、あたしが言うのもアレだけどちょっぴり天然でめちゃくちゃかわいい顔した妹。
大切で、かけがえのない存在。
だけど、それだけじゃない。
あたしの妹と、あたしの大好きなこいつは‥‥恋人同士。
ふたりが恋人同士になったのはつい最近の事。
‥話を聞いた時はびっくりした。
でも色々な事情があるみたいだった。
入学してわずか3日で学校中のアイドルになった妹‥‥
学校一のモテモテ美男子なこいつ‥‥
そのふたりが告白の嵐から逃れるためについたウソ‥‥『ふたりは恋人同士』
それはたくさんの生徒の前で公言されたから、あっという間に学校中に広まった。
それ以来、ふたりは誰からも告白されたりすることなく穏やかに日々を過ごしているようだ。
だからあたしはこれ以上踏み入れることができない。
それにこいつは妹のコト、好きなんだと思う。目を見てたらなんとなくわかる。
でもそれ以上にあたしのコトを好きであってほしい。
だってあたしがこんなにこいつのコトが好きなんだから。
もう、決めたんだ。
自分に正直に行きていくって。
妹には何やっても勝てないけど、こいつのコトを好きな気持ちだけは負けたくない。
「「ただいま〜〜」」
今日は妹が2階で寝ている。風邪をひいてしまったたからだ。
鞄を置こうとリビングに入ると、クマ‥‥じゃないやお母さんが物凄い格好でソファに寝ていた。
白眼を剥いてるから死んでるのかと思ったら「ぐおぉーー」って物凄いイビキをたてた。
起こさないように、必死で笑い声を堪えるのが大変だった。