恋する日々〜アガパンサス〜-6
「…ねぇあやな?」
「なに?香織?」
香織は同じ方向だったあやなにふと声をかける。あやなは人見知りをし、かつ今まで女子校だったので男性に対する慣れがなかった。それに加え初対面の人間には軽い恐怖感を持っていた。だが香織は以前より知り合っていたので普通に話すことができた。二人は親友同士であった。
「この間助けてもらったって言ってたの誠でしょ?」
「えぇっ!?わ、わかるの!?」
「この辺りで銀髪っていったら誠しかいないしね」
そう、あやなは先日誠がナンパから助けた女の子だった。その時のあやなは前髪を伸ばし、顔を隠していたので誠は気づけなかったのだ。
「同じ学校だったんだね…」
頬を赤らめどこか嬉しそうにそう呟いた。
「まぁ、誠は今のとこ彼女はいないから頑張ってみな」
「うん…って、か、香織!?わ、私は別にそ、そ、そんなんじゃ!!」
「私は応援するからさ」
「あぅぅ…」
あやなは考えている事がすべて香織に見透かされている気がしそれ以上言葉を紡ぐのをやめた。二人の上下関係はどうやら香織の方が上らしい。香織は内心喜んでた。男性に対し苦手意識があった友人の初恋。自分の事のように嬉しくなり、出来る限りの協力をするつもりであった。その心境は母や姉のものに近かった。
「……香織」
「ん?」
俯き黙っていたあやなが口を開いた。
「ありがとう」
「……ん」
短いやりとりではあったがお互いに通じ合っていたようだ。
恋が始まった。それは誠とあやなだけではない。彼等を取り巻く全ての人の恋が今始まった。その恋がどうなるかはまだ誰もわからない。