記憶のきみ5-1
『暑い』
「暑いで」
「暑いね」
照りつける太陽、止まない蝉の音。
時期は七月中旬に差し掛かっていた。
あれからなかなか六人の予定が合わずに、気付けばズルズルとここまで来ていた。
しかし、講義の時間が合えばよくみんなで食堂に出向いていたので、全く六人で会っていないわけではない。
「女の子らと俺はひたすら講義でー」
「俺はバイト」
『そして俺は運転免許取得…』
「気付けば夏期休暇突入だもんね」
「それよか、あちーわ…なんで夏は暑いんかね…」
灰慈はシャツをパタパタを仰ぎながらベンチに腰を下ろし、棒つきアイスをくわえた。
三人は大学からさほど離れていないコンビニにたむろしていた。
「……こう暑いと、昼間はフラフラ出ていけねーな」
「あ」
青空が突然、遠くを見るような顔をした。
「ん?どした?」
「昼間忙しくて暑いなら、夜会えばいいんじゃないかな」
瞬と灰慈はしばらくポカーンとしていたが、すぐに二人は青空をベンチから勢いよく突き飛ばした。
『……なんではやく気付かねえんだ、この天然』
「せや!どアホー♪」
「えー…」
三人で笑い合うと、すぐさま予定を立て始める。
「花火やりてぇ花火!」
「いいね」
『あ…』
「今度は瞬かよ。どうした?」
『そういや来週の日曜、夏祭りあるらしい。花火も上がるとかって…』
そう言いながら、瞬はジャケットのポケットを探った。
『………ほら、これ駅でもらった』
青空は瞬からチラシを受け取り、読み始めた。
「……へぇ、本当だ。20時から打ち上げ花火が上がるみたいだね」
「ほー♪ええやん!さっそく誘ってみよか」
灰慈は小声で歌を口ずさみながらケータイを耳に当てた。
「………あ、もしもし、灰慈やけど………」
灰慈は、なぜか二人から離れて電話をし始めた。
離れていく灰慈を見ながら、青空はスポーツドリンクを口に運ぶ。
「……葵ちゃんみたいだね」
『そうみたいだな』
「あいつもよくやるね」
『……まったくだな』
そのとき、ふと気になった。
『青空は……由貴とどうなんだ?』
すると青空はひどく驚いた顔をする。
「………俺はてんでダメだよ。なんていうか、連絡はとってるんだけどね……灰慈のように器用にはいかない」
へぇ、青空もけっこう悩んでるんだな。
『……そうか』
「…………瞬」
ひどく冷たい声で呼ばれた。
『ん?』
「由貴ちゃんのこと、今でも好き?」
『………』
「瞬」
とても悲しい声に変わる。
『………なに言ってんだよ青空、俺はもとから由貴を恋愛対象として見たことないぞ』
「……」
青空は複雑な表情をしている。
そんなにも俺が気になるのか。
『………由貴は真面目なやつが好みだ。頑張れよ』
「………俺は由貴ちゃんが好きだ」
複雑な顔から真面目な顔に変わる。
『……ああ』
青空はこれ以上、なにも言わなかった。
すると、ちょうど灰慈が戻ってきた。