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淫魔戦記 未緒&直人
【ファンタジー 官能小説】

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淫魔戦記 未緒&直人 3-16

「ドウアガコウトワレガコノオトコニトリツイテイルジジツニカワリハナイ。ドウヤラオマエハコノオトコガヒツヨウナヨウダガ、ドウヤッテワレトキリハナスツモリカ?」
「簡単さ」
伊織は獣の口をこじ開け、自らの唾液をそこに垂らす。
「お前は以前未緒を抱いた際、その体から離れねば射精し続けるという罠にはめられた事があったな?あれは未緒が力の弱いハーフだったために、わざわざ体をつなげなきゃ発動しづらい難儀な代物だったが……」
にいっ、と伊織は笑った。
「俺は純血なんでね。わざわざそんな回りくどい真似をしなくても、同じ事ができる」
「ナッ……!?」
獣が驚きの声を上げるより早く、体に異変が起こる。
今まで強固に押さえ込んできた直人の心が、物凄い勢いで暴れ始めた。
伸びた牙が、骨が、爪が、元に戻るべく縮んでいく。
獣には、なす術がない。
「未緒は優しいからな……お前にとどめは刺さなかった。だが俺は優しくないし、ただお前を追い出すだけなんて芸のない事は言わない。お前の存在は未緒にとって毒ではあっても薬にはならないから、きっちりととどめを刺してやるよ」
伊織は片腕を振りかぶる。
「ん……」
その時、未緒が意識を取り戻した。
起き上がって頭をしゃっきりさせるように何度か振った後、組み合っている二人に気付く。
「あ……」
「いいところでお目覚めだな」
振りかぶった腕を止め、伊織は娘の方を振り向いた。
「よく見ておけよ。今から、こいつを滅ぼす」
「……こいつ?」
伊織の下に組み敷かれている、ほぼ人間の姿へ戻った獣。
「お前の恋人に取り憑いた、俺の元使い魔だ」
そう言われ、未緒は息を飲んだ。
「安心しろ。傷一つ付けずに本体を助けてやる」
伊織は腕を振り下ろす。
ずぶりっ、と指先が少年の額に沈み込んだ。
「−ッ!?」
未緒の喉から、声にならない悲鳴が漏れる。
「安心しろ。傷一つ付けないと言ったろ」
そう言われ、未緒は少年の額を見る。
血が吹き出してもおかしくないはずなのに、額に指が突き立っているという異常さ以外は特に何もない。
「手の組織を少年の肉体と同調させている。死にはしないよ」
そう説明しながら、伊織は直人の額を指でかき回している。
「……隠れても無駄だ」
やがて、伊織は手を引いた。
現れた指先に、小さな黒い塊をつまんでいる。
「脳みその襞の奥なんかに隠れやがって……」
「それが……あれなの?」
未緒の素朴な疑問に、伊織はうなずいた。
「これがあれだ」
もやもやと蠢くそれを、伊織が握り潰す。
ばしゅっ!
小気味いい音をたてて、それは雲散霧消した。
「さて……」
伊織は立ち上がろうとするが……それは、かなわなかった。
永遠に。

どんっ……!

鈍い、音。
「……おに……何をした……!?」
地の底から響いてくるような、直人の声。
その手が、伊織の胸を貫いている。
憑依を解かれ、直人が自意識を取り戻したのだった。
「お父さんっ!!?」
未緒が悲鳴を上げる。
つぅっ、と伊織の唇から一筋の赤い液体が流れた。
「詳しい事は……未緒に聞け。俺はもう教えられんからな」
にやり、と伊織は不敵に微笑んだ。
その体が、ぶじゅぶじゅと汚らしい音をたてて溶け始める。
「お父さん!」
「未緒……後、は……頼む……」
ぶしゅぶしゅぶしゅっ……ジューッ
伊織だったものは完全に溶け、直人の体と地に汚らしい染みを作った。
すぐにそれも、風に溶けて消えてしまう。
−悪魔などの魔性の者は、死んでも死体が残らない。
「未緒……無事、か?」
体を乗っ取られ、かなり衰弱しているのだろう。
大地に横たわったままで、直人が声をかけてきた。
「直人……」
未緒は駆け寄り、その体を起こしてやる。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、未緒は何度もそう呟いた。
「未緒?」
本来なら指一本動かすのもおっくうなほど疲れ切っている体を、直人は無理に動かす。
「何を謝る必要があるの?」
未緒の頬を撫で、直人は尋ねる。
泣き続けながら、未緒は答えた。
「私達……別れよう」


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