淫魔戦記 未緒&直人 2 〜覚醒〜-12
かくて、ドタバタは解決した。
プライドをズタズタにされたグループは解散し、元メンバーの中でも根性なしの連中が『藤谷未緒のせいで潰滅させられた』と吹聴して回ったおかげで一部で未緒は有名になった。
詳しくは誰も語らず、言葉を濁していたのがミソだろう。
そして潰滅の手伝いをしたとして、直人と俊樹も一部で有名になった。
「結局のところ、俺が一番損したんじゃないか?」
俊樹はそう呟いて、ひとりごちる。
−せっかくの休みなので、俊樹は街をぶらついていた。
「だから未緒……ね?」
「やだ、桂子……」
近くではしゃぐ声が耳に届き、俊樹は視線をそちらに向ける。
カフェのテラス席で女の子が二人、楽しげにお喋りしていた。
そこにいたのは、未緒と桂子だった。
「未緒……」
俊樹は呟いた。
胸の奥が、ズキンと痛む。
「……忘れる事なんて、そうそうできないか」
俊樹は首を振り、その光景から目を背けた。
万が一にも気付かれないように、俊樹はそっと離れていく。
少し歩くと、誰かが声をかけてきた。
「篁君」
振り向くと、女の子が立っている。
「き、奇遇ね。こんなとこで会うなんて」
「あー、確か……わ、わた……何だっけ?」
「綿貫よ!もう、クラスメイトの名前くらい覚えておいてよね!」
すねてぷっと頬を膨らませる様が、何とも言えず愛らしい。
「あー、綿貫な。ま、奇遇だよな」
「……ね、ヒマなの?」
問い掛けに、俊樹は少し考えてからうなずいた。
「まあな」
「あ!そ、それじゃあさ、買い物!買い物に付き合ってくれない!?」
「はぁ!?」
「い、いいじゃない!ヒマなんでしょ!?」
その言い方に、俊樹は思わず苦笑する。
「……そうだな。いいぜ、付き合っても」
「やったあ!!」
綿貫の派手な声に気が付いたのか……未緒が不意にこちらを見た。
ばっちり視線が合ったので、ごまかす事は不可能だった。
俊樹は未緒と視線を絡ませ……先に離す。
未緒は、手に入れてはいけない女。
「篁、君?」
首をかしげる綿貫に、俊樹は微笑みかけた。
「何でもない。行こう」
殊更に明るい態度を装って、俊樹は歩き出す。
「さ、どこに行く?」
「ん〜、それじゃあねえ……」
綿貫の無邪気に輝く表情を見て、俊樹は微かに口元を緩ませていた。