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WAKALE
【失恋 恋愛小説】

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WAKALEー翔ー-1

どうしてあの時、泣き叫んで『好きだ』と、何度も言えなかったんだろう。
どうしてあの時、あいつを抱きしめてやらなかったんだろう。
分からない。けど、確かなのは、あいつー空ーと、別れた事だけ。


WAKALEー翔ー


『ん…?』
思考回路がボヤ〜ッとしていて、一瞬ここがどこだかわからなかった。だんだん視界がハッキリしてくる。
液晶テレビ、その前にステンレスの机、横に黒革のソファー。
ああ…、俺の部屋か…。
ダルい体をゆっくりと持ち上げる。ベッドの前においてある目覚まし時計の短針は、既に正午を指していた。
洗面台に立ってまだ眠気の残る目を、冷水でこじ開けた。鏡に映る自分の顔。だいぶ、まいっていた。
昨日結婚前提の恋人ー空ーと別れた。正確には、フラれた。理由は、自分の浮気。とは言っても、これも正確には浮気じゃない。
あの後、どうやって帰ってきたんだっけ…。思い出せねえや。
またベッドの上に寝転がった。本当なら、昨日は空の部屋に泊まって恋人としての最後の一夜を過ごすはずだった。『夫婦』へと変わる前に。そして幸せな朝を、迎えるはずだったのだ。
(静かだな…。)
空は快晴。部屋には驚くほどの静寂が漂っていた。
耐えられなくてテレビをつけた。人の声を聞いていなければ、頭が変になりそうだった。
だけど、どうしても考えてしまう。どうしてこんな事になったのか。空は今何をしてるのか。もう、戻れないのか。
初めてだった。あんな空は。いつもは、自分を包んで、嫌な事とか寂しさとか全部吹き飛ばしてくれる。そんな空気のように慈愛に満ちた空が、あんなにも怒った。今にも泣き叫びそうな死にそうな顔をして、怒った。その事に驚いて、空をそこまで傷つけた自分が情けなくて、言葉さえ出なくて、結果別れを受け入れてしまった。どうかしている。こんなに好きなのに、どうしてそう言ってやれなかったんだーーーー。
『空…っ!』
喉が痛かった。熱く、燃えるように。涙をこらえてるからじゃない。泣きたいのに、泣けない。それくらい、あいつを愛してるから。それが、前よりもっと身に染みて、死にそうなほどつらかった。


どのくらい、そうして体をうずめてただろう。いくら思い返しても、考えても、結局は行き着く場所は同じ。
空が、好き。どうしようもないほど、愛してる。
これ以上、何を考えればいいだろう。何を思えばいいだろう。
この先?
もう別れたのに?
謝ってやり直す?
そんな都合のいい事は出来ねえよ。
諦め方?
誰か知ってたら教えてくれよ。
どうしたって、例え空が俺を嫌いになったって、俺はあいつが好きなんだ。だけど、もうこの気持ちは届かない。俺はあいつの所には戻れないんだ。だってもしかしたら、あいつが勘違いしたままなら、都合がいいと思われるかもしれない。弁明すれば、もっと怪しまれるかもしれない。そして何より、俺を、情けない男だと、そう思うだろう。
あいつが好きな俺は、情けなくなんかない、いつでも輝いてる俺だった。情けないってのは、グチったりとかそんなじゃない。男として、どこまで潔くなれるか。つまり潔くない俺は、空は嫌なんだろう。だけど、空。俺は、情けない男なんだ。お前が思うより、ずっと。お前がいるから、輝いていられる。お前が側にいる事が、俺の光だったんだよーーーーー。


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