僕とお姉様〜前に進む賭け〜-4
「頑張ろうね、山田!!」
一応同志という事なのか右手を差し出され、拒否する理由もなく素直に握手をした。
そこで気づいた。無邪気さに引っかき回されてさっきまでの激しい怒りを忘れていた事を。
「もう年下はいいや。次は大人の男を探そっと。山田は?また年下?」
「そこまで考えてないです」
「じゃあ今度は大人の女はいかが?あたしみたいな」
「やです」
「ダメねぇ、子供は。この魅力が分からないなんて」
分かんないのは魅力じゃなくてあんただよ…って言ったら怒るかな。
ほんと、変な女。
せっかく綺麗なのにもったいない。
朝。
2人が家を出た頃を見計らってから起床。やっぱり顔を合わせたくないと言うか気まずいと言うか…
今朝もお姉様は起きる気配なし。居候のくせにいい度胸だよなぁ、後生大事に携帯なんか握り締めて…
「…」
指と指の隙間から見えたのはプリクラだった。
幸せそうに笑うお姉様の横にはあの平成生まれの元彼の姿がある。
泣いたら吹っ切れるって言ったの誰だっけ。めちゃくちゃ引きずってんじゃん。
賭けは、自分の為でもあったのかな。
この人も前に進みたかったんだろうか。強がっちゃって、意外と可愛いとこあるじゃん。
うまくいけば総額一万二千円の賭け。
ずっと初恋をし続けてきたから、今更他の誰かを好きになるなんてできるのかすごく不安だった。
でも相変わらず名前も知らないこのお姉様を可愛いと思えて少しだけ自信が湧いた。
ひばりちゃんじゃない誰かを好きになれるかもしれない。
すぐには無理だけど、いつか…
そんな淡い希望で少しだけ軽くなる心。
寝顔のお姉様に小さく行ってきますを告げて、また1日が始まる。