=シリーズ番外編・白木麻衣と矢城孝之の修羅場-3
「馬っ鹿っヤッロォーーーー!!!!」
「ぐはっ!?」
我が双子の妹にして、最愛の彼女である麻衣の親友…白雪の左ストレートが俺の顔を右から左へと打ち抜いた。
さすが……ナイスパンチ。
「合コン行って、麻衣と鉢合わせして泣かせた上に、憲まで巻き込みやがって!! 見ろ!」
激怒する白雪の指さす先には、顔に青たんつけた憲がいた。
「麻衣を宥めようとしたら、肘がくるわ蹴りがくるわだったらしいじゃないか!? その上、バイトクビになったんだぞ!!」
「ま、まぁまぁ白雪。落ち着けよ。俺は大丈夫だって。青たんは恥ずかしいけど、バイト先はそろそろ変えようかなって思ってたから」
鬼神か明王か閻魔か……何にせよ、恐ろしい顔した白雪を憲が宥めてくれる。
白雪、間違いなくお前は母さんの血を色濃く受け継いでるな。
「これが落ち着いていられるか!! こいつが身内じゃなかったら、市中引き回しの上で打ち首獄門だ!!」
「獄門って、なんだったっけ?」
長い髪が怒髪天を突く状態な白雪の後ろで八木さんが独に疑問をぶつけてる。
みんな集まって、我が家で俺の弾劾裁判を兼ねた仲直り議論大会開催中だ。
「え、しらねぇ」
「晒し首の事だ」
独の代わりに憲が恐ろしい事実を口にする。白雪、実の兄になんてことを……。
「まぁ、孝之も反省してんだしさぁ。ちょっとはその角、引っ込めたらどうだ?まるで般若だぞ」
「うるさいっ」
「だめだ、独。ここまで沸騰した白雪は簡単には冷めないぞ」
さりげに俺を見捨ててませんか? 憲くん。
「麻衣ちゃんはどうしてるの?」
「家で、部屋に籠もってるってさ」
「つーか、ここでダラダラ話してたって無駄だろ?さっさと白木さんとこ行って、事情話して謝った方が早くね?」
ギクッ……。
「確かにな。そっちの方が確実で、しかも手っ取り早い。」
独、余計な事を……。憲まで気付いちまったじゃないか。
「……なるほど、一人じゃ何して良いかわからないから、ここでみんなから知恵を絞り取ろうと…そういう魂胆だった訳か、孝之!!」
「麻衣ちゃん、可哀想…」
うぐ、白雪が詰め寄り、その後ろで八木さんが俯いてる。
なんか、俺…悪役になってない?(その通り)
俺だって、騙されたのに。
学校の友人に誘われたら、合コンだったという顛末。そう、俺だって被害者なんだ!
そ、それにみんな…友達だろ?
「基本的に俺は白雪の味方だし」
「矢城に反対して殺されたくない」
にべもなく、男の友達二人は離脱。
八木さんは、麻衣に完璧に同情しちゃってるし。白雪は論外だ……って、白雪?
「え〜っと……母さんの電話番号は……」
携帯片手に、白雪が呟く。
「それだけは勘弁して下さい!!!!」
母さんにこの事が知られようものなら、間違いなく俺の命はない。抹殺される。そして、とても形容し難い屍をこの家のどこかで晒すことになる。
「嫌なんだったら、ちゃんと話し、してこい。悔しいけどな、アタシじゃどうにもなんないんだ。麻衣がふさぎ込んでる元凶はお前だけど、元気にしてやれるのも……お前だけなんだぞ」
白雪の一言が、俺の心に響いた。
……そうか。
そうだよな……。
俺は、麻衣の恋人なんだ。
悲しませたのは、俺だけど、仲直りできるのも俺だけだ。