特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.4-13
「アッ、アッ、アッ…ック」
喉を反らせて桜が鳴く。奥を捕らえる度に反動で声を漏らす。
痛いだろう。苦しいだろう。最悪だ。なんて卑怯なんだ。でも止まらない。止められない。
好きだ。好きだ、好きだ好きだ好きだ好きだ………
……桜ッ
桜の腰を逃げられない様に掴み、叩き付ける様に身体を動かし、桜の細くて小さいそこに矢田は精を放った。
長い葛藤は波にさらわれ、意識も不意に軽くなる。
「……桜…」
矢田の声は掠れ、柔らかい髪の毛が桜の胸元に降りた。
桜は飛び出しそうな鼓動に、心地よい冷たさを感じた。矢田のワックスで濡れた髪の毛が気持ち良い。
矢田の手が無意識に髪をかき上げた。ひたいが痒かったのだろうか、かき上げるとまた動かなくなる。
「…寝てるの?」
尋ねるが返事は無い。
板張りの床に肩甲骨が擦れてしまった様。少しひりひりする。
だけど…目眩がする様な幸せだ。
真空パックして取っておきたい、なんてそんな唄を思い出し、まったくだと笑った。
本当に幸せで、夢みたいで…………
………っ
唇を突き出す
………っ
唇を横に引っ張る。
声にするのが勿体ない。
これが偽りのない、自分から矢田への正直な気持ち。
桜はぎゅっと矢田の手を握り締める。
暖かい、大きな掌だった―――
「痴漢ー!?こいつが!?」
矢田がゲラゲラと笑った。
いつもと同じ風景。ショートホームルームが終わった瞬間から、彼らの放課後が始まる。
帰り支度をする中で、いつもの様に矢田と西岡と清水が立ち話をしていた。
「ありえねー、西岡、冗談も程々にしとけよなぁ」
話題はかの化学のレポートの話の様だ。
「これから提出してくるんだぜ。折角教えてやったんだから、しっかり働けな」
西岡がお決まりの薄い笑いを漏らす。
「ところで矢田の課題は?ほら言えよ」
西岡に肩を叩かれ、矢田は待ってましたとばかりに胸を張った。
「四十八手のうちから五手以上を実践だって」
にこにこの矢田。勿論、教室に残っている生徒達には全く意味が通じて無い様だ。
「矢田君ほど脳天気なら、この課題に苦労する奴なんていないだろうなぁ」
清水がぼやき、
「それは言える」
と西岡も鼻で笑った。