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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』
【学園物 官能小説】

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特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.4-14

じゃ、よろしくな、と野郎二人に頼まれた矢田は、ぼんやりとしていた桜を呼んだ。

昨日の今日。
矢田とは授業や休み時間に少しお喋りをしたくらいだ。桜は昨日の有らぬ事を思い出し、紅い顔を困らせていた。

「そうだ、矢田」
顔を紅くしながら桜が近付く。何か思い出した様だ。
「矢田、そう言えば課題を……その………」
「桜ちゃん、待って…後、2分……」
時計の針と睨めっこ。矢田の長い指が携帯の文字盤を指す。
「ん?」
矢田の指している文字盤を覗き込む。
そこには簡素に文字が並んでいた。
桜の耳朶が面白いくらい、すぐに紅く染まっていく。


『今日の放課後も一緒にレポートをやらない?
今度は俺の部屋、とかでさ』


上目遣いで桜が見上げると、にっこりとった矢田がいた。
瞳で分かる。自分の気持ちも相手の気持ちも。手にとる様に……


「…よし、ジャスト」
自分の席からベランダに移動しながら、矢田が携帯のボタンを軽快に押す。ちなみに、ちょいちょいと手招きするのも忘れない。
桜は不思議そうに追い掛ける。矢田はどこかに電話を掛けた様だ。
幾分、教室より静かなベランダで、矢田は携帯を耳にあてた。

「あ、すみません。3年5組の矢田です。……はい、化学で少し疑問に思ったことが有りまして……はい、……はい。お願いします」
矢田が礼を言い終えると、微かに保留音が聞こえた。矢田が目を細めながら空を見る。

「……今度、海にでも行こうか」

矢田が笑った。
桜が満面の笑みで返す。
耳元の保留音がプッ……と切れた瞬間、矢田の親指が電源ボタンを押した。
いや、押してしまったのは電源だけでは無く……

桜のスイッチも、あの長く逞しい指により、押されたに違いない。


「…海に行こうか」

二人の始まりは、抜ける様な青空と、緩やかな風だけしか知らない――――





「薫」
呼ばれて振り向くと、自分と同じ様な出で立ちをした男が立っていた。
物理教師、柏沼 竜也(カシヌマ タツヤ)
大学の同期で、腐れ縁のままこの高校でも一緒に教鞭を振るう事になった。
「レポートは楽しんでるか」
その事まで伝わっている。大河内はお決まりのしたり顔をして見せた。
「勿論。柏沼、お前だって丁重に扱えよ。一枚噛んでるのはお前だって同じだからな」
「分かってる。そろそろだと目星は付けてある」
胸元から煙草を取り出し、一本口に咥えた。
「火」
咥えたまま顎で火を催促する。大河内は仕方無しと自分も新しい煙草を咥え、カチンとZIPPOを開いた。
二人の顔が近付く。橙色の炎が2本の煙草の真ん中で揺らめいた。


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