いつもの場所で-9
それからの俺はより一層部活に打ち込んだ。
けど、がむしゃらじゃなく、楽しむように。
玲緒那とはあれ以来話せてない。
隼の話によると勉強に打ち込んでいるらしい、あと、告白されても断っていると。
新人戦まであと一週間と迫った日、俺は久々に授業サボって裏庭に行った。
裏庭はイチョウの木が色づき始めているところだった。
「相変わらず綺麗にしてんなぁ・・・。けど、さすがに寒いか。」
まだ秋といっても冬が近くなる頃だ。
芝生には寝れないのが残念だ。
目を閉じ風を感じる。匂いはすっかり秋の香りだ。
段々瞼が重くなっていくのがわかった。少しだけ・・・少しだけ休もう。
そう思ってその重みに身を委ねた。
しばらくして目を開けると、心地よい香りと暖かさがあった。
香りで誰だかわかった。愛しくて忘れられない香りだった。
「サボり魔」
いつもの挨拶。いつもの声。
「・・・玲緒那・・・」
どうやら俺は寝てる間に玲緒那に膝枕してもらっていたみたいだ。
どかなきゃ。そう思ってたけど、体は、いや心もそれをしようとしなかった。
「来たらベンチで横になってるから、死んだのかと思った。」
どかない俺を一瞥するわけでもなく、玲緒那はそう微笑み言った。
抱きしめたい心を必死で抑えて、今まで伝えたかったことを言った。
「・・・俺新人戦のスタメンになれたよ・・・」
「ほんと?よかったじゃん!」
玲緒那の笑顔は眩しいくらいだった。
「試合、見に来いよ。勝ったら、話したいことあるから。」
ちょっと素っ気無かったかなと不安になった。
「うん!見に行く!絶対!」
その言葉に俺はさらにやる気を出して、鬼と化した。
試合当日――――
俺は見事スタメンに入っていた。
この一週間鬼となって頑張った成果だ。
予選は平日で学校と重なっているため、玲緒那は見に来れないだろう。
けど、決勝のある日曜日までなんとか勝ち残るんだ!!
俺は燃えた。熱くなった。玲緒那に告白するために!!
「なぁ・・・蓮次から湯気みえねぇ?」
「あぁ・・・湯気って言うか火が見えるよ・・・」
「あ、やけどした・・・。」
「俺も・・・まぁ、俺ら補欠だし・・・」
「まぁな・・・補欠だもんな・・・」
〜〜〜とある補欠部員の呟きより〜〜〜
俺らは着々と勝ち進んだ。
鬼と化した俺。鮮やかな技術を披露する渡部先輩。緻密な計算でパスを出す辻先輩。
俺らの前に立ちはだかる敵はなかった。