H.S.D*13*-4
「でもやっぱ、同情はしちゃうよ。あたしも何かしてあげたいって思うし、力になりたい」
「ありがと」
矢上は口元だけで笑って、ぼそっと呟いた。
「けどね、矢上が同情されたくないっつぅんだったら、全然しない」
矢上は歩みを止めた。
少し驚いたような顔をして、あたしを見下ろしている。
「あたしも亜樹ちゃんには死んでほしくない。もっといっぱい話しをして仲良くしたい。でも…いつかは来るんでしょ…?」
矢上はあたしから目を逸らした。本当はあたしだって、そんなこと考えたくない。
「矢上が亜樹ちゃんを大切に想ってるように、亜樹ちゃんも矢上をすごく大切にしてる。だから、矢上は亜樹ちゃんに『楽しかった』『幸せだった』って思ってもらえるようにすればいいと思う」
安っぽい言葉だ。言いたいことをうまく伝えられない。あたしが矢上にしてあげることと同じじゃないか。上手いことを言えない自分に腹が立つ。
でも矢上は、またあたしを見てくれた。前とは違う。あったかくて、澄んだ…そう、亜樹ちゃんと同じ綺麗な瞳で。
「それと『借りた物』はいつか必ず返しな」
あたしはフンッと鼻から息を吐いた。
それを見て矢上は
「そうだね、分かった」
と楽しそうに笑った。
あたしはこの笑顔を見たいんだ。
とくんとくんと心がテンポよく鳴り響いている。ずっと、このときめきが終わらなきゃいいのに…と、あたしは思った。
矢上から電話が掛かってきたのは、二日後の日曜日だった。